卵巣嚢腫の手術とは?必要になるケースや方法、入院期間・費用、妊娠への影響を解説

卵巣嚢腫の手術とは?必要になるケースや方法、入院期間・費用、妊娠への影響を解説

「卵巣嚢腫で手術をすすめられたけれど、本当に必要なの?」「入院や費用、妊娠への影響が心配」と悩んでいませんか。

卵巣嚢腫は、小さく症状がなければ経過観察となることも多い一方、大きさや症状、悪性の可能性によっては手術が必要になります。現在は体への負担が少ない腹腔鏡手術が主流で、妊娠を希望する場合は卵巣を残す方法が選ばれることが一般的です。

ただし、手術によって卵巣の働きに影響が出る場合もあるため、妊活中の方は手術のタイミングや方法を慎重に考えることが大切です。

本記事では、卵巣嚢腫で手術が必要になるケースや手術方法、入院期間・費用、リスクや妊娠への影響までわかりやすく解説します。手術を検討している方や、これから妊娠を考えている方はぜひ参考にしてください。

この記事の監修者
恵愛生殖医療医院 院長 林 博
恵愛生殖医療医院 院長林 博

1997年、東京慈恵会医科大学卒業。同大学病院にて生殖医学に関する臨床および研究に携わる。

2011年4月恵愛病院生殖医療センター開設。生殖医療専門医・臨床遺伝専門医の資格等数多くの資格を資格を保有。

自ら体外受精・顕微授精や不育治療を経験しており、患者さま目線の治療を心がけている。

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卵巣嚢腫で手術が必要になるケース

卵巣嚢腫と診断されても、すぐに手術になるとは限りません。ここでは、手術が検討される主なケースを3つ紹介します。

嚢腫が大きい場合

手術を検討するうえで、まず目安となるのが嚢腫の大きさです。一般的に、嚢腫が4〜6cm程度を超えると手術が検討されることが多いとされています。

大きさが目安になるのは、嚢腫が大きくなるほど卵巣が重くなり、根元からねじれる「茎捻転」や、嚢腫が破れる「破裂」が起こりやすくなるためです。また、嚢腫の種類によっては自然に消失せず、大きくなると周りの臓器を圧迫して、腹部の張りや頻尿などを引き起こす場合があります。

ただし、手術の判断は大きさだけで決まるわけではありません。嚢腫の種類や年齢、大きくなるスピード、妊娠の希望なども含めて総合的に判断されるため、数字だけで「手術が必要」「不要」と決めつけず、医師と相談しましょう。

強い痛みや茎捻転・破裂が起きた場合

茎捻転や破裂が起きた場合は、緊急手術が必要になることがあります。

茎捻転では卵巣への血流が途絶えるため、突然の強い下腹部痛や吐き気、嘔吐が起こります。時間がたつほど卵巣がダメージを受けやすくなり、卵巣ごと摘出しなければならないケースもあるため、できるだけ早く処置することが大切です。

また、緊急ではなくても、慢性的な下腹部痛や月経痛が強く、日常生活に支障が出ている場合は、症状を改善する目的で手術が検討されることがあります。

急に激しい腹痛が起きたときは、我慢せずにすぐ医療機関を受診してください。

悪性が疑われる場合

そのほか、超音波検査やMRIなどで悪性が疑われる所見がある場合は、嚢腫の大きさや症状の有無にかかわらず、手術が検討されます。

良性か悪性かを確かめるために、摘出した組織の病理検査が必要になることもあります。

卵巣嚢腫の手術方法

卵巣嚢腫の手術は、「どのようにお腹を開けるか」と「どこまで切除するか」の2つの視点で方法が分かれます。

腹腔鏡手術と開腹手術

現在、良性の卵巣嚢腫の手術では、腹腔鏡手術が主流となっています。

腹腔鏡手術は、お腹に数か所の小さな穴をあけ、カメラや細い器具を入れて行う手術です。開腹手術に比べて傷が小さく、術後の痛みが少ない傾向があるため、入院期間が短く、日常生活へ早く戻りやすい点がメリットです。傷あとが小さく目立ちにくいことも特徴です。

一方で、嚢腫が非常に大きい場合や、悪性の可能性が高い場合、過去の手術や子宮内膜症による癒着が強い場合などは、開腹手術が選ばれることもあります。どちらの方法が適しているかは嚢腫の状態によって異なるため、医師の説明を受けたうえで決めましょう。

【関連記事】腹腔鏡手術とは?開腹手術との違いや対象疾患、入院・術後の流れを解説

嚢腫摘出術と付属器摘出術

卵巣嚢腫の手術では、切除する範囲によって以下のような術式が用いられます。

  • 嚢腫摘出術:嚢腫だけをくり抜くように取り除き、正常な卵巣を残す方法
  • 付属器摘出術:嚢腫ができた側の卵巣と卵管をまとめて取り除く方法

妊娠を希望する方や若い方では、卵巣の機能をできるだけ残すために、嚢腫摘出術が選ばれることが一般的です。一方、閉経が近い方や悪性が疑われる場合などは、付属器摘出術が検討されます。

なお、片側の卵巣と卵管を取り除いても、もう一方が残っていれば排卵は続くため、妊娠は可能です。また、手術中に嚢腫の状態を確認したうえで、切除する範囲が変更になる場合もあります。手術の範囲は将来の妊娠に関わるため、妊娠の希望があることを事前に医師へ伝えておきましょう。

卵巣嚢腫の手術の入院期間と費用

手術を受けるにあたって、仕事や家庭の予定を立てるためにも、入院期間と費用の目安を知っておきましょう。

入院期間は腹腔鏡手術で5日程度が目安

卵巣嚢腫の腹腔鏡手術では、入院期間は5日程度が目安とされています。一般的には手術の前日または当日に入院し、術後1日目から歩行や食事を少しずつ再開していきます。開腹手術の場合は傷が大きく回復に時間がかかるため、1週間〜10日程度の入院となることが多いです。

ただし、術後に発熱や出血がみられた場合などは、予定より入院が延びることもあります。

退院後は、無理のない範囲で少しずつ普段の生活に戻していきます。仕事への復帰時期は手術方法や仕事内容によって異なるため、デスクワークか体を使う仕事かなどを医師に伝え、目安を確認しておくと安心です。

【関連記事】腹腔鏡手術の入院期間は何日?疾患別の目安や入院から退院までの流れを解説

手術費用は保険適用・高額療養費制度の対象

卵巣嚢腫の手術は健康保険が適用されるため、自己負担は原則3割です。さらに、高額療養費制度を利用すれば、1か月の自己負担額に所得に応じた上限が設けられます。

厚生労働省によると、70歳未満で年収約370万〜約510万円の方が医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約9.3万円までに抑えられます。また、2026年8月からは、月ごとの上限に加えて年単位の上限も設けられました。

マイナ保険証を利用するか、事前に「限度額適用認定証」を入手しておけば、窓口での支払いを上限額までに抑えられます。

なお、入院中の食事代や差額ベッド代は制度の対象外です。実際の自己負担額は、手術の方法や入院日数、加入している健康保険によって異なるため、手術前に病院の窓口で見積もりを確認しておくとよいでしょう。

また、ご加入の民間医療保険によっては手術給付金を受け取れる場合があります。あらかじめ、保険会社または契約内容をご確認いただくことをおすすめいたします。

参考:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

卵巣嚢腫の手術のリスクと術後の再発

卵巣嚢腫の手術は一般的に行われている手術ですが、ほかの手術と同様にリスクがあることも理解しておきましょう。

主なリスクとしては、出血や感染、腸や膀胱など周りの臓器の損傷、術後の癒着などが挙げられます。また、腹腔鏡手術では、癒着が強い場合などにまれに途中で開腹手術へ切り替えることもあります。

頻度は高くないものの、ゼロではないため、手術前に医師から説明を受けておくことが大切です。術後に発熱や強い痛み、出血が続く場合は、退院後でも早めに受診しましょう。

なお、手術後に嚢腫が再発する場合もあります。特にチョコレート嚢胞は、子宮内膜症が背景にあるため再発しやすく、手術をした卵巣だけでなく、反対側の卵巣に新たにできることもあります。

再発を防ぐ方法として、術後に低用量ピルなどのホルモン療法を続けることで、再発リスクの低下が期待できると報告されています。ただし、ホルモン療法中は排卵が抑えられるため、妊娠を希望する時期に合わせて治療方針を医師と相談しましょう。

卵巣嚢腫の手術と妊娠への影響

妊活中や将来妊娠を考えている方にとって、手術が妊娠にどう影響するかは気になるポイントです。手術による妊娠への影響について、以下で詳しく解説します。

手術で卵巣予備能が低下する場合がある

嚢腫摘出術では卵巣を残せる一方、卵巣の働きに影響が出る場合がある点には注意が必要です。

嚢腫を取り除く際には、周りの正常な卵巣組織も一部失われることがあります。その結果、卵巣に残っている卵子の数の目安となる「AMH(抗ミュラー管ホルモン)」が、術後に低下したとする報告があります。

特に、チョコレート嚢胞の手術や、両側の卵巣を手術した場合は影響が大きくなりやすいとされています。AMHは年齢とともに自然に低下していくため、手術による影響とあわせて考える必要があります。

そのため、手術の前にAMHを測定し、卵巣予備能を確認したうえで手術の方法や時期を検討することもあります。

妊娠を希望する場合は手術と不妊治療の順番を相談する

妊娠を希望している場合は、年齢や卵巣予備能、嚢腫の状態を踏まえ、手術と不妊治療のどちらを先に進めるかを医師と相談しましょう。

チョコレート嚢胞に伴う不妊では、手術によって自然妊娠の可能性が高まる場合があります。ただし、その効果を裏づける比較研究は十分ではありません。また、体外受精の成績改善だけを目的とした手術は、効果が示されておらず、一律には勧められていません。

手術によって卵巣予備能が低下すると、採卵できる卵子の数が減るおそれもあります。そのため、年齢が高い方やAMHが低い方では、嚢腫の大きさや痛みの有無なども確認し、手術より先に採卵を行うことがあります。

術後に妊活を再開できる時期は、手術内容や回復の状況によって異なります。不妊治療と手術の両方に詳しい医師と相談し、治療の順番から妊活再開の時期まで、自分に合った進め方を決めていきましょう。

【関連記事】体外受精とは?不妊治療の進め方・成功率・費用・向き合い方を解説

まとめ

卵巣嚢腫の手術は、嚢腫が大きい場合や強い痛みがある場合、悪性の可能性を否定できない場合などに検討されます。現在は腹腔鏡手術が主流で、入院期間は5日程度が目安です。費用は健康保険と高額療養費制度の対象になります。

一方で、手術によって卵巣予備能が低下したり、チョコレート嚢胞が再発したりする場合もあります。特に妊娠を希望している方は、手術のタイミングや方法、不妊治療との順番を含めて検討することが大切です。

気になることがある場合は、不妊治療を行う医療機関へ相談しましょう。

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