腹腔鏡手術とは?開腹手術との違いや対象疾患、入院・術後の流れを解説

腹腔鏡手術とは?開腹手術との違いや対象疾患、入院・術後の流れを解説

「腹腔鏡手術を受けることになったけれど、どのような手術なのかわからない」「開腹手術と何が違うの?」と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

腹腔鏡手術とは、お腹に小さな穴を開け、カメラや専用の器具を挿入して行う手術です。開腹手術と比べて傷が小さく、術後の痛みが少ない、回復が早いといったメリットがあります。一方、すべての病気や患者さんに適しているわけではなく、手術中に開腹手術へ切り替える場合もあります。

本記事では、腹腔鏡手術の仕組みや開腹手術との違い、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。対象となる主な病気や入院から退院までの流れも紹介するので、腹腔鏡手術を検討している方は参考にしてください。

この記事の監修者
恵愛生殖医療医院 院長 林 博
恵愛生殖医療医院 院長林 博

1997年、東京慈恵会医科大学卒業。同大学病院にて生殖医学に関する臨床および研究に携わる。

2011年4月恵愛病院生殖医療センター開設。生殖医療専門医・臨床遺伝専門医の資格等数多くの資格を資格を保有。

自ら体外受精・顕微授精や不育治療を経験しており、患者さま目線の治療を心がけている。

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腹腔鏡手術とは

腹腔鏡手術とは、お腹に数か所の小さな穴を開け、腹腔鏡と呼ばれるカメラや専用の器具を挿入して行う手術です。

一般的には、お腹の中に炭酸ガスを入れて膨らませ、手術を行うための空間を確保します。そのうえで腹腔鏡や鉗子などを挿入し、医師がモニターに映し出された映像を確認しながら患部を切除・縫合します。

開腹手術のようにお腹を大きく切開する必要がないため、傷が小さく、体への負担を抑えやすいのが特徴です。また、カメラで術野を拡大できるため、細かな血管などを確認しながら精緻な操作を行える利点もあります。

腹腔鏡手術と開腹手術の違い

腹腔鏡手術と開腹手術の大きな違いは、お腹を切開する範囲と手術の方法です。

主な違いをまとめると、以下のとおりです。

項目腹腔鏡手術開腹手術
傷数か所の小さな傷が中心比較的大きく切開する
手術方法カメラの映像を見ながら器具を操作患部を直接見ながら操作
術後の痛み比較的少ない腹腔鏡手術より強い傾向
出血量少ない傾向腹腔鏡手術より多い傾向
回復比較的早い腹腔鏡手術より時間がかかる傾向
特徴拡大した術野を確認できる患部を直接見たり触れたりできる

腹腔鏡手術は傷が小さいため、開腹手術と比べて術後の痛みが少なく、回復も早い傾向があります。

ただし、腹腔鏡手術が常に優れているわけではありません。病気や患者さんの状態によっては、安全性や治療効果を考慮して開腹手術が選択されます。

腹腔鏡手術のメリット

腹腔鏡手術の代表的なメリットは以下のとおりです。

  • 傷口が小さく目立ちにくい:数か所の小さな傷で手術できるため、美容面での負担を抑えられます。
  • 術後の痛みを抑えやすい:開腹手術と比べて切開範囲が小さく、術後の痛みも少ない傾向があります。
  • 出血量を抑えられる場合がある:カメラによる拡大視野で細かな血管などを確認しやすく、出血量を減らせる場合があります。
  • 術後の回復が早い傾向にある:体への負担が比較的小さいため、早期の回復が期待できます。
  • 入院・社会復帰までの期間を短縮できる場合がある:術後の回復が早ければ、入院期間や仕事へ復帰するまでの期間も短くなる可能性があります。

ただし、これらはあくまで一般的な傾向です。実際の痛みや回復期間などは、手術する部位や術式、患者さんの状態によって異なります。

腹腔鏡手術のデメリット・リスク

腹腔鏡手術は体への負担を抑えやすい一方で、以下のようなデメリット・リスクがあります。

  • 高度な技術が必要になる:限られたスペースでモニターを確認しながら器具を操作するため、術者には技術や経験が求められます。
  • 手術時間が長くなる場合がある:術式によっては、開腹手術より細かな操作が必要となり、手術時間が長くなる傾向があります。
  • 合併症が起こる可能性がある:出血や周囲臓器の損傷など、手術に伴う合併症が起こる可能性があります。
  • 開腹手術へ変更される場合がある:安全に手術を続けることが難しいと判断された場合は、手術途中で開腹手術へ切り替えることがあります。

たとえば、出血への対応が難しい場合などには、安全性を優先して開腹手術へ移行することがあります。

腹腔鏡手術だから必ず安全というわけではありません。メリットとリスクの両方を理解したうえで、医師から十分な説明を受けることが大切です。

腹腔鏡手術が行われる主な病気

腹腔鏡手術は、消化器・婦人科・泌尿器科など幅広い領域で行われています。

代表的な対象疾患の例は以下のとおりです。

診療領域腹腔鏡手術が行われる病気の例
消化器胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓の疾患など
婦人科卵巣嚢腫、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮体がんなど
泌尿器科腎がん、腎盂・尿管がん、副腎腫瘍など

腹腔鏡手術は婦人科領域でも幅広く行われており、卵巣嚢腫や子宮内膜症などが対象となる場合があります。

当院では、不妊症や良性卵巣嚢腫、子宮内膜症・卵巣チョコレート嚢胞、多嚢胞性卵巣症候群などを腹腔鏡手術の適応として案内していますが、手術が必要な場合は他院を紹介しています。

なお、実際に腹腔鏡手術を受けられるかどうかは、病気の種類だけで決まるものではありません。病変の大きさや位置、進行度、これまでの治療歴などを踏まえて判断されます。

腹腔鏡手術を受けられない・適さない場合もある

病気や患者さんの状態によっては、腹腔鏡手術より開腹手術が適している場合があります。

具体的には、以下のようなケースです。

  • 腫瘍が大きい、または周囲へ進行している
  • 過去の手術などによって強い癒着が予想される
  • 腹腔鏡では安全な手術が難しいと判断される
  • 患者さんの全身状態などから別の術式が適している

たとえば大腸がんでは、腫瘍が非常に大きい場合や、過去に大きな開腹手術を複数回受けている場合などは、開腹手術が選択されることがあります。また、がんの手術では傷を小さくすることだけでなく、がんを適切に切除できるかという「根治性」も重要です。

そのため、「傷が小さいから腹腔鏡手術を選ぶ」と単純に判断するのではなく、安全性や治療効果を踏まえて医師と手術方法を相談することが大切です。

腹腔鏡手術を受ける場合の入院から退院までの流れ

腹腔鏡手術では、手術前の検査や準備を行ったうえで入院し、術後の状態を確認してから退院するのが一般的です。

おおまかな流れは以下のとおりです。

  1. 診察・検査を受ける 手術の適応を確認するために、血液検査や画像検査など必要な検査を受けます。
  2. 手術の説明を受ける 手術方法や麻酔、合併症などについて医師から説明を受けます。
  3. 入院する 手術前日または数日前など、医療機関から指定された日に入院します。
  4. 腹腔鏡手術を受ける 一般的には全身麻酔下で手術を行います。手術時間は病気や術式によって異なります。
  5. 術後の経過を確認する 傷や出血、発熱などの状態を確認しながら、歩行や食事を段階的に再開します。
  6. 退院する 食事や歩行などに問題がなく、医師が退院可能と判断すれば退院となります。

入院期間は、対象となる病気や術式、術後の経過によって大きく異なります。比較的小規模な手術では術後数日で退院できる場合もありますが、手術内容によっては1週間以上の入院が必要になることもあります。

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腹腔鏡手術後の注意点

退院後は、医師の指示に従い、無理をせず徐々に普段の生活へ戻していくことが大切です。

腹腔鏡手術は傷が小さいとはいえ、体の内部では臓器の切除や縫合などが行われています。傷が小さいからといって、すぐに手術前と同じ生活へ戻れるわけではありません。

仕事や運動、旅行、入浴などを再開できる時期は、手術内容や術後の経過によって異なります。自己判断せず、退院時に医師へ確認しましょう。

また、退院後に発熱や強い腹痛、傷口からの出血など気になる症状が現れた場合は、手術を受けた医療機関へ相談してください。

腹腔鏡手術に関するよくある質問

最後に、腹腔鏡手術についてよくある疑問に回答します。なお、費用や入院期間は手術の内容によって大きく異なるため、紹介する数字はあくまで一例として参考にしてください。

腹腔鏡手術の費用はどれくらい?

腹腔鏡手術の費用は、対象となる病気や術式によって異なりますが、おおよそ50万~65万円程度と考えるとよいでしょう。ただし、多くの疾患では健康保険が適用されるため、自己負担は原則3割です。

さらに、1か月の医療費の自己負担が一定額を超える場合は、高額療養費制度を利用できる可能性があります。ただし、差額ベッド代や食事代などは別途必要になる場合があります。具体的な費用は、手術を受ける医療機関へ確認しましょう。

腹腔鏡手術の回復期間・入院期間はどれくらい?

腹腔鏡手術の入院期間や社会復帰までの期間は、対象となる病気や術式、術後の経過によって異なります。実際の退院日や仕事へ復帰できる時期については、担当医へ確認してください。

腹腔鏡手術の死亡率はどれくらい?

不妊治療や婦人科疾患の治療で腹腔鏡下手術(卵巣腫瘍摘出術、子宮筋腫核出術、子宮全摘出術など)をご提案されることがあります。「手術」と聞くと死亡リスクが気になる方もいらっしゃるでしょう。

結論から言うと、良性の婦人科疾患に対する腹腔鏡手術の死亡率は極めて低く、目安として0.003〜0.01%程度(数万例に1例程度)と報告されています。開腹手術に比べて体への負担も少なく、原則として安全性の高い手術と考えていただいて差し支えありません。

一方、子宮体がんや子宮頸がんなど悪性腫瘍が対象の場合は、死亡率がやや上がり目安として0.05〜0.2%程度とされます。特に進行がんが疑われるような難易度の高い手術では、腸管損傷や血栓などの重篤な合併症への注意がより必要になります。

これは消化器外科領域でも同様の傾向があり、胆のう摘出術のような難易度の低い手術は死亡率0.1%未満と低い一方、膵臓や肝臓の切除など難易度の高い手術では1.5〜3%程度まで上がります。つまり、手術が難しくなるほど、また対象が進行したがんであるほど死亡リスクはやや高くなる傾向があり、逆に婦人科の良性疾患手術のように難易度が比較的低い手術は、総じて安全性の高い方法だと言えます。

死亡を含む重篤な合併症についてご不安がある場合は、一般的な数字だけでなく、ご自身が受ける手術方法や体の状態を踏まえた個別のリスクについて、担当医から十分な説明を受けるようにしてください。

まとめ

腹腔鏡手術は、お腹に小さな穴を開け、カメラや専用の器具を使って行う手術です。開腹手術と比べて傷が小さく、術後の痛みや出血を抑えやすいほか、早期の回復や社会復帰が期待できます。

一方、腹腔鏡手術には高度な技術が必要であり、病気の種類や進行度、患者さんの状態によっては適さない場合もあります。安全性を優先し、手術中に開腹手術へ切り替えるケースもあります。

また、費用や入院期間、回復までの期間は、受ける手術によって大きく異なります。腹腔鏡手術を検討している場合は、メリットだけでなくリスクについても理解したうえで、自分の病気に適した手術方法を担当医と相談することが大切です。

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