卵巣嚢腫とは?種類・症状・治療法や妊娠への影響をわかりやすく解説

「健診で卵巣嚢腫があると言われたけれど、どんな病気なの?」「手術が必要?妊娠には影響する?」と不安に感じていませんか。
卵巣嚢腫は、卵巣の中に液体などがたまり、袋状にふくらむ腫瘍のことです。多くは良性で、すぐに命に関わるものではありません。
ただし、大きくなると卵巣がねじれて強い痛みが出たり、種類によっては妊娠に影響したりすることがあります。良性か悪性かの見極めや治療方針は、嚢腫の種類や大きさによって異なるため、正しい知識をもったうえで医師と相談することが大切です。
本記事では、卵巣嚢腫の種類や症状、検査・治療の方法、妊娠への影響までわかりやすく解説します。妊活中の方や、これから妊娠を考えている方もぜひ参考にしてください。
卵巣嚢腫とは?
卵巣嚢腫とは、卵巣の中に液体や脂肪などがたまり、袋状にふくらんだ状態の腫瘍です。卵巣にできる腫瘍の大部分は良性で、卵巣嚢腫はその代表的なものです。
一方で、卵巣が腫れていても、すべてが卵巣嚢腫とは限りません。排卵の過程でできる「機能性嚢胞(卵胞嚢胞・黄体嚢胞)」は、数週間~数か月ほどで自然に小さくなることが多いため、一度の検査だけで判断せず、経過をみることもあります。
なお、卵巣の腫瘍には良性のほかに、境界悪性や悪性(卵巣がん)のものもあります。超音波検査で袋状に見えるものは良性のことが多いものの、見た目だけで完全に区別できるわけではないため、必要に応じて詳しい検査を受けることが大切です。
卵巣嚢腫の主な種類と原因
卵巣嚢腫は、袋の中にたまっている内容物によって、主に4つの種類に分けられます。
| 種類 | 中身 | 主な原因・特徴 |
|---|---|---|
| 漿液性嚢腫(しょうえきせいのうしゅ) | さらさらした液体 | 原因ははっきりしていない |
| 粘液性嚢腫 | ねばりのある液体 | 原因ははっきりしていない。大きくなりやすい |
| 皮様嚢腫(成熟嚢胞性奇形腫) | 脂肪・毛髪・歯など | 卵子のもとになる細胞から生じると考えられている。20〜30代に多い |
| チョコレート嚢胞(子宮内膜症性嚢胞) | 古い血液 | 子宮内膜症が卵巣にできることで生じる |
このように、卵巣嚢腫の多くは原因がはっきりしておらず、生活習慣などで予防できるものではありません。
一方、チョコレート嚢胞は子宮内膜症の一つで、子宮内膜に似た組織が卵巣の中で月経のたびに出血を繰り返し、古い血液がたまることで大きくなります。エストロゲン(女性ホルモン)の影響を受けて進行するため、ほかの嚢腫とは治療の考え方が異なる点を理解しておきましょう。
卵巣嚢腫の症状
卵巣嚢腫は、ある程度の大きさになるまで気づきにくい病気です。ここでは、日常で現れやすい症状と、すぐに受診したい症状を分けて解説します。
大きくなるまで自覚症状が出にくい
卵巣嚢腫は、小さいうちはほとんど症状がありません。そのため、健康診断や婦人科検診、不妊検査の超音波検査で偶然見つかるケースが多くみられます。
嚢腫が大きくなると、周りの臓器を圧迫することで、以下のような症状が現れることがあります。
- 下腹部の張りや痛み
- お腹がふくらんだ感じ
- 頻尿
- 便秘
- 腰痛
また、チョコレート嚢胞の場合は、月経痛が年々強くなったり、性交時に痛みを感じたりすることもあります。症状の出方には個人差があるため、「いつもと違う」と感じる変化が続く場合は、早めに婦人科へ相談しましょう。
茎捻転・破裂による急な腹痛に注意
卵巣嚢腫で特に注意したいのが、「茎捻転(けいねんてん)」と「破裂」です。
茎捻転とは、嚢腫によって重くなった卵巣が、根元からねじれてしまう状態です。卵巣への血流が妨げられ、突然の強い下腹部痛や吐き気、嘔吐が起こることがあります。処置が遅れると卵巣が壊死し、卵巣ごと摘出しなければならない場合もあります。
茎捻転は、ある程度の大きさがあり、周りと癒着していない嚢腫で起こりやすいとされています。運動や体の向きを変えたことをきっかけに起こる場合もあるため、嚢腫を指摘されている方は、急な痛みのサインを覚えておきましょう。
また、嚢腫が破れると、中身がお腹の中に漏れ出し、強い痛みを引き起こします。
どちらも緊急手術が必要になる場合があるため、急に激しい腹痛が起きたときは、夜間や休日でも迷わず医療機関を受診してください。
卵巣嚢腫の検査・診断方法
卵巣嚢腫は、主に画像検査で大きさや中身を確認し、良性か悪性かを見極めていきます。
まずは問診と内診を行い、経腟超音波検査で嚢腫の有無や大きさ、袋の中の状態を調べます。性交経験がない場合などは、お腹の上や肛門からの超音波検査で代用することもあります。内診や検査に痛みや不安がある場合は、遠慮せずに医師へ伝えましょう。
超音波で詳しい判断が難しい場合は、MRIで内容物の性質を確認します。MRIでは脂肪や古い血液を見分けやすいため、皮様嚢腫やチョコレート嚢胞の診断に役立ちます。
あわせて、血液検査で腫瘍マーカーを測定し、判断材料の一つにします。ただし、腫瘍マーカーはチョコレート嚢胞や月経などでも上がることがあり、数値だけで悪性かどうかは判断できません。
最終的な診断は、手術で取り出した組織を顕微鏡で調べる「病理検査」によって確定します。
卵巣嚢腫の治療法
卵巣嚢腫の治療は、嚢腫の種類や大きさ、症状、年齢、妊娠の希望などをふまえて決められます。
小さく症状がない場合は経過観察
嚢腫が小さく、症状や悪性を疑う所見がない場合は、すぐに治療せず経過観察となることが多いです。機能性嚢胞の可能性がある場合も、時間をおいて再検査し、自然に小さくなるかを確認します。
経過観察では、数か月〜半年ごとなど医師が判断した間隔で超音波検査を受け、大きさや中身の変化をチェックします。検査の間隔は嚢腫の状態によって異なるため、自己判断で通院をやめないことが大切です。
なお、経過観察中に嚢腫が大きくなった場合や、痛みが出てきた場合は、治療方針を見直すことがあります。
大きい・症状がある場合は手術を検討
嚢腫が大きい場合や症状がある場合、悪性の可能性を否定できない場合は、手術が検討されます。手術を考える大きさの目安は4〜6cm程度とされることが多いものの、実際には嚢腫の種類や年齢などを含めて総合的に判断されます。
手術の方法は、お腹に小さな穴をあけて行う腹腔鏡手術が広く用いられています。ただし、悪性が疑われる場合や嚢腫が非常に大きい場合などは、開腹手術が選ばれることもあります。
また、切除する範囲には主に以下の2つがあります。
- 嚢腫摘出術:嚢腫だけを取り除き、正常な卵巣を残す方法
- 付属器摘出術:嚢腫ができた側の卵巣と卵管を取り除く方法
妊娠を希望する場合は、卵巣を残せる嚢腫摘出術が選ばれることが一般的です。どの方法が適しているかは嚢腫の状態によって異なるため、医師とよく相談しましょう。
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チョコレート嚢胞はホルモン療法が選ばれることも
チョコレート嚢胞の場合は、手術ではなくホルモン療法から始めることもあります。
ホルモン療法では、低用量ピルや黄体ホルモン製剤などを使い、排卵や月経を抑えることで痛みの軽減や病変の進行の抑制をめざします。嚢腫が小さくなる場合もありますが、効果には個人差があり、薬をやめると再び大きくなる可能性も否定できません。
また、治療中は排卵が抑えられるため、妊娠を希望する時期には治療方針の見直しが必要です。
なお、日本産科婦人科学会によると、チョコレート嚢胞は約1%ががん化するといわれています。特に40歳以上や、嚢腫が大きい場合は注意が必要とされているため、症状が落ち着いていても定期的に検査を受けましょう。
卵巣嚢腫は妊娠に影響する?
卵巣嚢腫があるからといって、必ずしも妊娠できないわけではありません。
皮様嚢腫や漿液性嚢腫などは、嚢腫そのものが不妊の直接の原因になる可能性は低いとされています。一方、チョコレート嚢胞の背景にある子宮内膜症は、卵管周りの癒着や炎症などを通して、妊娠しにくさにつながることがあります。
また、卵巣嚢腫を残したまま妊娠した場合、妊娠中に茎捻転を起こすおそれがある点にも注意が必要です。妊娠中は手術の時期や方法が限られるため、嚢腫が大きい場合は、妊娠前の治療を考えておくとよいでしょう。
このように、卵巣嚢腫と妊娠の関係は種類や大きさによって異なります。妊活を始める前や不妊治療中に卵巣嚢腫が見つかった場合は、治療の順番も含めて医師に相談しておくと安心です。
なお、良性の嚢腫であっても、治療の内容によっては卵巣の働きに影響することがあります。
手術が卵巣機能に影響する場合もある
卵巣嚢腫の手術は、卵巣の働きに影響を与える可能性がある点も理解しておきましょう。
嚢腫を取り除く際には、周りの正常な卵巣組織も一部失われることがあります。実際に、チョコレート嚢胞の摘出後に、卵巣に残っている卵子の数の目安となる「AMH(抗ミュラー管ホルモン)」が低下したと報告されています。
そのため、妊娠を希望する場合は、手術をするかどうかだけでなく、手術のタイミングや方法も慎重に検討することが大切です。年齢や卵巣の状態によっては、手術の前に体外受精などの不妊治療を優先するケースもあります。
どの選択肢が適しているかは一人ひとり異なるため、不妊治療を行う医療機関で相談しながら決めていきましょう。
まとめ
卵巣嚢腫は、卵巣に液体などがたまって袋状にふくらむ腫瘍で、多くは良性です。小さいうちは症状が出にくいものの、大きくなると茎捻転や破裂によって急な強い腹痛が起こることがあります。
治療は経過観察から手術、ホルモン療法まであり、嚢腫の種類や大きさ、妊娠の希望によって選択肢が変わります。特に妊娠を考えている方は、手術が卵巣機能に影響する場合もあるため、治療の順番も含めて検討することが大切です。
気になることがある場合は、不妊治療を行う医療機関へ相談しましょう。
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