慢性子宮内膜炎とは?症状・原因・検査・治療法や不妊との関係を解説

「慢性子宮内膜炎とはどのような病気なの?」
「不妊や流産との関係はあるのだろうか」
このような疑問を抱えていませんか。
慢性子宮内膜炎は、子宮内膜に炎症が長期間続く状態で、自覚症状がほとんどないまま経過することも少なくありません。一方で、不妊や着床不全、流産との関連が指摘されており、不妊検査の過程で見つかるケースもあります。
本記事では、慢性子宮内膜炎の症状や原因をはじめ、検査方法や治療法、不妊との関係についてわかりやすく解説します。治療後の妊娠への影響やよくある疑問についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
慢性子宮内膜炎とは
慢性子宮内膜炎とは、子宮の内側をおおう子宮内膜が継続して炎症を起こしている状態を指します。
急性の子宮内膜炎が発熱や強い下腹部痛を伴うのに対し、慢性の場合は症状が乏しく、長期間気づかれないまま放置されやすいのが特徴です。子宮内膜に「形質細胞」と呼ばれる免疫細胞が存在するかどうかが、診断の手がかりとされています。
慢性子宮内膜炎は決してまれな疾患ではなく、特に不妊症や反復着床不全、反復流産の患者で比較的多く認められることが報告されています。近年では、着床や妊娠維持を妨げる要因になり得ることも指摘されている点にも注意が必要です。
慢性子宮内膜炎の主な症状
慢性子宮内膜炎は、目立った症状がみられないケースがほとんどです。炎症が比較的おだやかに続き、痛みや発熱などのわかりやすいサインは基本的に現れません。
ただし、人によっては不正出血やおりものの異常、慢性的な下腹部の違和感などがあらわれる場合もあります。月経以外のタイミングで少量の出血が続いたり、おりものの色やにおいがいつもと違うと感じたりしたときは、慢性子宮内膜炎を疑ったほうがよいかもしれません。
とはいえ、症状だけで慢性子宮内膜炎かどうかを見分けることは難しいため、気になる変化があるときは早めに医療機関を受診することが大切です。
慢性子宮内膜炎の原因
慢性子宮内膜炎は、大腸菌やマイコプラズマ、腸球菌などの細菌感染が主な原因とされています。
本来、子宮内は細菌が繁殖しにくい環境です。しかし、出産・流産や子宮内手術などをきっかけに何らかの細菌が侵入すると、炎症を引き起こすことがあります。
また、子宮内避妊器具の使用や細菌性腟症などの感染症も慢性子宮内膜炎を引き起こす原因のひとつです。関係している菌は1種類とは限らず、複数の菌が関わっている場合もあります。
検査をしたからといって原因が特定される保証はありませんが、まずは医療機関を受診し、医師の判断を仰ぐことが大切です。
慢性子宮内膜炎が不妊につながる理由
次に、慢性子宮内膜炎が不妊につながるメカニズムを詳しくみていきましょう。
反復着床不全との関係性
慢性子宮内膜炎が起きている状態では、受精卵が着床しにくくなるとされています。着床に適した環境が乱れ、受精卵を受け入れる力である子宮内膜受容能が低下するためです。
例えば、体外受精で良好な胚を移植しても、着床に至らない「反復着床不全」が起きることがあります。
一方で、炎症を抑えて子宮内の環境を整えれば、着床率の改善も期待できるでしょう。着床不全の原因は多岐にわたるため、医師とも相談しながら、治療方法を検討することが大切です。
流産・早産のリスクが高まる可能性も
慢性子宮内膜炎は、流産・早産のリスクを高める要因のひとつと考えられています。子宮内膜に炎症が残っていると、妊娠が成立したあとに胎児を育む環境が整いにくくなるためです。
実際に、原因がはっきりしないまま流産をくり返すケースを調べると、慢性子宮内膜炎が見つかることも少なくありません。また、子宮内の炎症が妊娠中期以降にも影響した場合は、早産につながる可能性も指摘されています。
ただし、慢性子宮内膜炎が起きているからといって、必ずしも流産・早産に至るというわけではありません。あくまでも、リスク要因のひとつとして捉えておくようにしましょう。
慢性子宮内膜炎の主な検査方法
ここでは、慢性子宮内膜炎の代表的な3つの検査方法について解説します。
子宮内膜組織検査(CD138染色)
慢性子宮内膜炎の基本的な検査方法といえるのが、子宮内膜組織検査です。子宮内膜の一部を採取し、顕微鏡で調べることで、炎症のサインとされている形質細胞の有無を確認します。
子宮内膜組織検査では、CD138免疫染色と呼ばれる手法を用いるのが一般的です。形質細胞の表面にある物質「CD138」を染色し、その数を正確に把握します。
子宮内膜組織検査は、比較的身体への負担も少ない手法です。実施の可否や方法は医療機関によって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
子宮鏡検査
子宮鏡検査は、子宮内部を直接観察し、炎症を疑う所見がないかを確認する検査です。3mm程度の細いカメラを腟から子宮内に挿入し、内膜表面の状態をモニターに映し出して調べます。
検査の結果、ポリープや内膜の赤み・むくみなどがみられた場合は、慢性子宮内膜炎が疑われることもあるでしょう。
ただし、見た目の所見だけで確定診断とするのは難しく、組織検査などと併用されることも少なくありません。複数の検査を組み合わせることで、より精度の高い診断につながります。
子宮内フローラ検査
子宮内フローラ検査は、子宮内に存在する細菌の種類や割合を調べる検査です。
慢性子宮内膜炎は、細菌バランスの乱れが一因となって起こることもあるため、間接的な検査方法として用いられます。採取した子宮内膜組織や分泌物から細菌のDNAを解析し、善玉菌とされる乳酸桿菌の占有率などを確認します。乳酸桿菌の割合が低い場合、慢性子宮内膜炎をはじめとする炎症性疾患のリスクが高まるとされています。
子宮内フローラ検査は、着床環境全体を把握する手がかりにもなる検査といえるでしょう。
慢性子宮内膜炎の検査を受けるタイミング
慢性子宮内膜炎は自覚症状がほとんどないため、不正出血やおりものの異常だけを理由に検査を受けるケースは多くありません。
実際には、不妊治療を続けても妊娠に至らない場合や、良好な胚を移植しても着床しない反復着床不全、流産を繰り返す反復流産の原因を調べる過程で検査が行われることが一般的です。
検査は子宮内膜の状態を正確に評価しやすい時期を選んで実施されることが多く、月経周期を考慮して日程が決められます。
また、子宮内膜組織検査(CD138染色)や子宮内フローラ検査は保険適応がないため(子宮内フローラ検査は先進医療)、保険適応による不妊治療中には検査を受けられない場合があります。
検査の適応や実施時期は医療機関や患者さんの状況によって異なるため、妊娠を希望していて慢性子宮内膜炎が疑われる場合は、担当医と相談しながら検査の必要性を判断しましょう。
慢性子宮内膜炎の治療法
次に、慢性子宮内膜炎の代表的な治療法を2つ紹介します。
抗菌薬による治療
慢性子宮内膜炎の治療では、抗菌薬(抗生物質)を服用するケースが一般的です。炎症を引き起こす原因の多くが細菌感染によるものなので、菌を抑える薬で改善を図ります。
治療に使用するのは、主にドキシサイクリンという薬剤です。一定期間服用したあとに再検査を行い、炎症が改善したかどうかを確認します。子宮内フローラ検査で悪玉菌が特定された場合には、それに対応する薬剤が使用されることもあります。
注意したいのは、症状が軽くなったからといって、自己判断で服用を中断しないことです。薬を途中でやめると炎症がぶり返すおそれもあるため、医師の指示にそって最後まで飲みきりましょう。
プロバイオティクス治療
慢性子宮内膜炎の患者、特に子宮内フローラ検査で乳酸桿菌の割合が低い場合には、プロバイオティクス治療が行われるケースもあります。
プロバイオティクス治療とは、乳酸菌などの善玉菌をサプリメントや薬剤で取り入れて、体内の微生物環境を整える方法です。子宮や腟内の細菌バランスが乱れると炎症が起きやすくなると考えられているため、良い菌を補うことで改善を目指します。
抗菌薬の使用による耐性菌の出現を防ぐ効果が期待できる点や、アレルギー体質の方が服用しやすい点も特徴のひとつです。
ただし、プロバイオティクス治療は近年注目され始めた新しい治療法であり、科学的な根拠が十分に示されているわけではありません。治療に取り入れるかどうかは、担当医に十分相談したうえで判断しましょう。
慢性子宮内膜炎の治療は保険適用される?
2022年4月から不妊治療の一部は保険適用となりましたが、慢性子宮内膜炎の検査・治療は、実施する内容や適応によって保険診療・自由診療の扱いが異なります。不妊治療の一環として自由診療となるケースもあるため、事前に医療機関へ確認しましょう。
また、検査・治療にかかる費用は、医療機関によって設定が異なる点にも注意が必要です。同じ検査内容でも、クリニックごとに差があることは珍しくありません。
ただし、不妊治療をめぐる保険の取り扱いは近年見直しが進んでおり、対象となる範囲が変わる可能性もあります。受診の前に、保険の適用範囲や費用の目安を医療機関に確認しておくと安心です。
慢性子宮内膜炎に関するよくある質問
最後に、慢性子宮内膜炎に関して、多くの方が疑問に感じやすいポイントをまとめました。
慢性子宮内膜炎が自然に治ることはありますか?
慢性子宮内膜炎は、軽度であれば自然に治るケースもあります。人間の身体には炎症を抑えようとする機能が備わっており、時間の経過とともに原因となる菌が減っていくこともあるためです。
とはいえ、自然に治る保証はなく、症状が乏しい病気なので治ったかどうかを自分で判断することも難しいでしょう。妊娠への影響が心配される状況では、自然に治るのを待つよりも、検査で状態を確かめたほうが確実です。
炎症が続いたまま不妊治療を進めると、うまく妊娠に至らない可能性もあります。少しでも気になることがあれば、自己判断で様子を見ず、医師の診断を受けてください。
慢性子宮内膜炎は再発することはありますか?
慢性子宮内膜炎は、治療によって一時的に改善したとしても、再発する可能性は残されています。特に不妊治療を続けている場合は、必要に応じて再検査を受け、身体の状態を確かめることが大切です。
再発が確認されたとしても、あらためて治療を行えば改善が期待できます。過度に心配せず、医師と連携しながら経過を見守っていきましょう。
まとめ
慢性子宮内膜炎は自覚症状が乏しく、本人でさえも気づきにくいうえに、着床不全や流産・早産との関連も報告されています。
診断には組織検査や子宮鏡検査、子宮内フローラ検査などの手法が用いられ、治療では抗菌薬を服用するケースが一般的です。検査・治療は、実施する内容や適応によって保険診療・自由診療の扱いが異なるため、費用については事前に医療機関へ確認しておきましょう。
慢性子宮内膜炎は正しく検査を受けて、治療を開始すれば、改善が見込めます。気になるときは自分で解決しようとせず、早めに医療機関を受診してみてください。
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