体外受精のデメリットとは?生まれてくる子供への影響やメリットを解説

「体外受精って、実際どんなリスクがあるの?」
「子どもへの影響も心配…」
不妊治療の選択肢として体外受精を検討しているものの、身体への負担や副作用、費用のことなど、不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
とくに初めて治療を受ける方にとっては、デメリットやリスクを事前に知っておきたいという気持ちは自然なことです。
本記事では、体外受精とはどのような治療法なのかを解説したうえで、治療にともなう副作用や合併症のリスク、生まれてくる子どもへの影響など、懸念されやすいポイントを丁寧に説明します。
また、あわせて体外受精のメリットについても紹介し、不安だけでなく前向きな選択ができるようサポートします。
治療を始める前に正しい知識を得て、ご自身にとって納得できる判断をするための一助としてください。
体外受精とはどのような治療法?
体外受精(IVF)とは、女性の卵子と男性の精子を体外で受精させ、受精卵(胚)を子宮に戻すことで妊娠を目指す不妊治療法です。
排卵を促すホルモン治療を行い、卵子を採取したあと、シャーレの中で精子と受精させて培養し、着床に適したタイミングで子宮内に戻します。
体外受精は、排卵障害や卵管の閉塞、精子の数や運動率の低下など、さまざまな原因で自然妊娠が難しい場合に有効とされます。
また、医師が卵子や胚の状態を確認しながら治療を進められるため、計画的かつ精度の高い不妊治療が可能です。
2022年からは健康保険の適用も始まり、以前に比べて費用面でのハードルが下がったことで、より多くの夫婦が選択肢として検討できる治療法となっています。
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体外受精とそのほかの治療法との違い
体外受精とよく比較される治療法のひとつに「顕微授精(ICSI)」があります。どちらも体外で受精させる方法ですが、大きな違いは精子と卵子の“受精のさせ方”です。
体外受精では、採取した卵子に多数の精子をふりかけ、自然に受精が起こるのを待ちます。一方、顕微授精では、1つの精子を細いガラス針で卵子の中に直接注入するため、受精の主導権は医療側にあります。
そのため、精子の数が極端に少ない・運動率が低いなどのケースでは、体外受精よりも顕微授精のほうが適しているとされています。
ただし、顕微授精はより高度な技術を要するため、費用が高くなりがちで、卵子に物理的なダメージを与えるリスクもあります。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、医師と相談しながら、状況に応じた治療法を選択することが大切です。
体外受精のデメリット
体外受精は、高度な医療技術を用いた不妊治療法として、多くの夫婦に妊娠の可能性をもたらしてきました。
しかし、治療にともなう身体的・精神的な負担や副作用、経済的な負担など、知っておくべきデメリットも存在します。
とくに「本当に安全なのか」「リスクはどれくらいあるのか」といった不安を抱える方は、体外受精を前向きに検討するためにも、治療のメリットだけでなく、起こりうるデメリットについても正しく理解しておくことが大切です。
ここでは、体外受精にともなう代表的なリスクや注意点を具体的に解説していきます。
卵巣過剰刺激症候群を発症するリスクがある
体外受精では、複数の卵子を育てるために排卵誘発剤を使用しますが、この薬が強く効きすぎると「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」という副作用が生じることがあります。
OHSSは、卵巣が過剰に反応して腫れ、腹部膨満感や吐き気、下腹部の痛みなどを引き起こす症状です。重症化すると、腹水や血栓症、腎機能の低下などを伴い、入院治療が必要になることもあります。
特に、若年層や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断された方はリスクが高いため、医師の管理のもとで慎重に治療を進める必要があります。
なお、最近では、OHSSの発症リスクを下げるために「低刺激法」や「凍結胚移植」などの方法が選ばれるケースも増えており、安全性を重視した治療法の選択が可能になっています。
採卵時に出血や腹腔内感染のリスクがある
体外受精をするためには、事前に採卵を行う必要があります。
採卵は、腟から細い針を卵巣に刺して卵子を取り出す処置であり、医療機関で麻酔をしたうえで行われます。
比較的安全な処置とされていますが、まれに合併症として「出血」や「腹腔内感染」が起こる可能性がある点に注意が必要です。
出血は、卵巣や腟壁、まわりの血管を傷つけた場合に生じ、程度によっては止血処置や入院が必要になることもあります。
また、針の穿刺により細菌が体内に侵入すると、骨盤内で炎症が起きて発熱・腹痛などの感染症状を引き起こすことがあります。
こうしたリスクは頻度としては低いものの、ゼロではありません。
特に過去に骨盤内の手術歴がある方や炎症性疾患がある方は、事前に医師に相談しておくことが重要です。
採卵後に強い痛みや発熱がある場合は、自己判断せず速やかに医療機関へ連絡するようにしましょう。
周産期合併症のリスクが高まる可能性がある
体外受精によって妊娠した場合、自然妊娠と比べて一部の周産期合併症(妊娠中や出産前後の合併症)のリスクがやや高まるとされています。
これは体外受精そのものによる影響だけでなく、不妊の原因や治療歴、年齢など複数の要因が関係していると考えられています。
起こりうる主な合併症は、以下のとおりです。
| 合併症名 | 内容 |
|---|---|
| 妊娠高血圧症候群 | 高血圧や蛋白尿などがみられ、胎児の発育不全や早産につながる可能性があります。 |
| 妊娠糖尿病 | 血糖値が上昇しやすくなり、将来的に2型糖尿病を発症するリスクが高まるとされています。 |
| 前置胎盤・常位胎盤早期剥離 | 胎盤の位置や剥がれ方に異常が起き、出血や早産、帝王切開の原因になります。 |
| 帝王切開率の上昇 | 合併症や胎児の状態により、帝王切開での出産が選択されることが増えます。 |
なお、これらの合併症は必ずしも体外受精が原因とは言い切れません。誰にでも起こりうる症状であることや、近年は医療技術の進歩によってリスクが押さえられていることを理解しておきましょう。
異所性(子宮外)妊娠の確率が高まる可能性がある
体外受精は、受精卵(胚)を医師の手で子宮内に移植する治療法ですが、まれに「異所性妊娠(子宮外妊娠)」が起こることがあります。
異所性妊娠とは、受精卵が本来着床すべき子宮内膜以外の場所、たとえば卵管や卵巣などに着床してしまう状態のこと。
進行すると出血や激しい腹痛を伴い、緊急手術が必要になるケースもあります。
そのため、妊娠反応が出た後は、子宮内に胎のうが確認できるかどうか、早期に医師の診察を受けることが大切です。
一般的な不妊治療よりも費用負担が大きい
体外受精は、タイミング法や人工授精(AIH)といった一般的な不妊治療と比べて、医療費が高額になる傾向があります。
採卵・受精・胚培養・胚移植といった多くの工程が含まれるため、1回の治療にかかる費用も高くなりがちです。
| 治療法 | 1回あたりの費用目安(自由診療の場合) |
|---|---|
| タイミング法 | 数千円~1万円程度 |
| 人工授精(AIH) | 1万円~3万円程度 |
| 体外受精(IVF) | 40万円~60万円程度 |
なお、2022年からは一定の条件を満たす体外受精に保険が適用されるようになり、以前に比べて経済的な負担は軽減されつつあります。
保険をうまく活用するのはもちろん、「何回まで続けるか」など、夫婦の経済状況に応じた治療スケジュールを立てることが大切です。
2022年4月以降は体外受精も健康保険の適用対象
2022年4月の制度改正により、体外受精は一定の条件を満たせば「保険診療」として受けられるようになりました。
これにより、以前は全額自己負担だった費用が、保険適用により大幅に軽減されるようになっています。
保険が適用される主な条件は以下のとおりです。
- 治療開始時の女性の年齢が43歳未満であること
- 医師が妊娠の可能性があると判断したケース
- 厚生労働省に認定された医療機関で治療を受けること
- 保険適用の回数制限以下であること
- 40歳未満は最大6回まで
- 40歳以上43歳未満は最大3回まで
自己負担は原則3割となるため、1回の治療費は約10万~20万円程度に抑えられるケースが多いです。また、高額療養費制度を利用できる場合もあり、世帯収入によってはさらに自己負担を軽減できる可能性があります。
さらに、民間の不妊治療保険や自治体の助成制度を併用すれば、経済的なハードルをより下げられるでしょう。
保険の詳細や注意点については、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
多胎妊娠になる可能性がある
体外受精では、1回の治療で妊娠の確率を少しでも高めるために、複数の胚を同時に子宮へ戻す「複数胚移植」が行われることがあります。
その結果、双子や三つ子などの「多胎妊娠」が起こる可能性が自然妊娠よりも高くなります。
多胎妊娠は、喜ばしい反面、妊婦や胎児の身体にかかる負担が大きくなる点に注意が必要です。
たとえば、以下のような合併症が発生しやすくなります。
- 早産や低出生体重児
- 妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病のリスク上昇
- 帝王切開になる確率が高くなる
- 母体への身体的負担が大きくなる
これらの理由から、現在では1個の胚のみを戻す「単一胚移植(SET)」が基本とされつつあり、特に若年層では多胎妊娠の回避が重視されています。
妊娠の可能性と安全性のバランスをとるためにも、胚の数については医師とよく相談して治療方針を決めるようにしましょう。
たくさんの精子が必要になる
体外受精では、採取した卵子に数万単位の精子をふりかけて自然な受精を促すため、一定数以上の運動性良好な精子が必要です。
しかし、男性側に以下のような精子に関する課題がある場合、通常の体外受精では受精が難しいことがあります。
- 精子の数が極端に少ない(乏精子症)
- 精子の運動率が低い(精子無力症)
- 精子の形態異常が多い
このようなケースでは、精子1つひとつを選別し卵子に直接注入する「顕微授精」が検討されます。
顕微授精では1個の卵子に対して1個の精子があればよいため、重度の男性不妊にも対応可能です。
体外受精には「ある程度の精子量と質」が求められるという前提があるため、事前の精液検査を通じて適切な治療法を選ぶことが大切です。
通院回数が多くなりやすい
体外受精では、排卵のタイミングを正確に把握したり、卵巣の反応をモニタリングしたりする必要があるため、採卵や胚移植の日程に向けて頻繁にクリニックに通う必要があります。
特に排卵誘発から採卵までは1~2日おきに通院が必要になることもあり、仕事や家庭との両立に悩む方も少なくありません。
また、採卵後の経過観察や胚移植前後の診察なども含めると、1周期あたり10回以上通院するケースもあります。
通院負担を少しでも軽減するためには、自宅や職場からアクセスしやすいクリニックを選んだり、スケジュール調整の柔軟性がある施設を探したりすることも重要です。
体外受精の治療の流れ
体外受精は、一般的に以下のようなステップで進められます。
- 排卵誘発:ホルモン注射などで複数の卵胞を育てる
- 卵胞チェック・ホルモン測定:数回にわたって通院し、発育状況を確認
- 採卵:成熟した卵子を体外に取り出す
- 受精・培養:体外で精子と受精させ、数日間胚を培養
- 胚移植:子宮内に選ばれた胚を戻す
- 黄体ホルモン補充:着床を助けるためにホルモン投与を継続
- 妊娠判定:胚移植から約10~14日後に妊娠の有無を確認
このように、1周期の中に複数の処置・検査が組み込まれているため、通院回数が多くなる傾向にあるのです。
体外受精が生まれてくる子どもへ影響することはある?
体外受精に関して、「障害のある子どもが生まれやすいのでは?」「奇形のリスクが高まるのでは?」といった不安の声を耳にすることがあります。
しかし、現時点で体外受精そのものが出生異常や先天性疾患の直接的な原因になるという医学的根拠は確認されていません。
たしかに、体外受精で生まれた子どもを対象にした研究では、ごくわずかに先天異常のリスクが高まる可能性が示唆された報告もありますが、その差は非常に小さく、自然妊娠との差が統計的に有意ではないとされることも多いです。
また、リスクがわずかに高く見える背景には、体外受精を受ける母体の年齢や既往歴など、不妊治療とは直接関係のない要因が影響しているケースもあります。
近年の研究では、体外受精で生まれた子どもたちの成長・発達は自然妊娠と同様であり、健康状態にも大きな違いはないとされています。
過度に不安になる必要はありませんが、気になる方は医師と十分に話し合い、必要に応じて遺伝カウンセリングなどの専門的なサポートを受けるのもよいでしょう。
体外受精はメリットが多い不妊治療法
ここまで体外受精にともなうリスクや注意点を紹介してきましたが、一方で体外受精は他の治療法では得られない多くのメリットも備えています。
ここでは、体外受精の代表的なメリットについて、わかりやすく解説していきます。
妊娠の確率を高められる
体外受精の大きなメリットのひとつは、他の不妊治療法と比べて妊娠の確率が高い点です。
実際、日本産科婦人科学会が公表している2023年のデータによれば、1回の胚移植あたりの妊娠率(妊娠率/総ET)は39.0%、治療1周期あたりでは20.6%とされています。
人工授精の妊娠率が1回あたり約5〜10%であることを考えると、体外受精はより高い確率で妊娠に近づける手段といえるでしょう。
さらに、治療の過程で卵子や胚の状態を確認できるため、「妊娠しにくい原因」を見つけやすく、次の治療方針に活かせるという利点もあります。
確率だけでなく、治療の“質”を高める手段としても有効です。
不妊症でも妊娠の可能性がある
体外受精は、自然妊娠が難しいとされるさまざまな不妊症の原因に対応できる点でも大きなメリットがあります。
たとえば、卵管が詰まっている・精子の数や運動率が著しく低い・排卵障害があるといったケースでも、体外での受精と計画的な胚移植によって妊娠のチャンスを得ることができます。
また、一定数の卵子を確保して胚の状態を確認しながら治療を進めるため、自然妊娠よりも管理がしやすく、計画的に妊娠を目指せるのも大きな魅力です。
このように、ほかの治療では妊娠に至らなかったカップルにとって、体外受精は現実的な選択肢となるでしょう。
顕微授精に比べると卵子への負担が少ない
体外受精と顕微授精はいずれも体外で受精させる治療法ですが、卵子への身体的な負担という観点では、体外受精のほうがやや軽いとされています。
体外受精では、複数の精子を卵子にふりかけて自然に受精させるため、卵子本来の受精能力を活かすことができます。
一方、顕微授精では、細いガラス針で卵子の中に1つの精子を直接注入するため、卵子に物理的なダメージを与える可能性があるのです。
顕微授精は精子の数や運動率が極端に低い場合には有効な治療法ですが、卵子への影響や手技の難易度を考えると、必要性がない限り体外受精が選ばれる傾向にあります。
複数の受精卵を得られる場合がある
体外受精では、1回の治療で複数の卵子を採取・受精させることができるため、良好な胚(受精卵)が複数得られる場合があります。
このとき、複数の胚を凍結保存しておけば、1回の採卵で複数回の胚移植が可能となり、身体的・経済的な負担を軽減することが可能です。
たとえば、1回目の胚移植で妊娠に至らなかったとしても、凍結しておいた胚を使って次の移植に進めるため、再び採卵や排卵誘発を行う必要がありません。
また、1人目の妊娠・出産後に、同じ時期に受精した胚を使って2人目を希望するケースもあり、兄弟姉妹の妊娠・出産を見据えた治療計画を立てることも可能です。
このように、複数の受精卵を得られることは、将来の不妊治療の選択肢を広げるうえでも大きなメリットといえるでしょう。
着床前診断で染色体異常の可能性を判断できる
体外受精では、胚移植の前に「着床前診断(PGT)」を行うことで、染色体異常の可能性をあらかじめ調べることができます。
これは、受精卵の一部の細胞を取り出して遺伝子や染色体の異常を検査する技術で、流産リスクの軽減や出生前診断への不安を和らげる手段として注目されています。
たとえば、ダウン症のような染色体異常や、家族性の遺伝性疾患などが懸念される場合、PGTを用いることでリスクの高い胚を避ける判断が可能です。
ただし、着床前診断はすべてのケースで自由に受けられるわけではありません。
国によっては着床前診断を禁止しているケースもあり、日本では反復流産や高齢妊娠など、一定の医療的必要性がある場合に限って認められています。
希望する場合は、着床前診断に対応している医療機関での相談が必要です。費用は保険適用外となることが多いため、事前に条件や費用面を十分に確認しておくことをおすすめします。(PGTにつきましては、恵愛生殖医療医院では現在準備中のため、現時点では実施しておりません。 )
まとめ
本記事では、体外受精のデメリットについて詳しく解説しました。
体外受精は、高度な医療技術を活用することで、自然妊娠が難しいご夫婦にも妊娠の可能性をもたらす不妊治療法です。
副作用や身体的・経済的な負担、そしてまれなリスクがあるのは事実ですが、それ以上に妊娠の確率を高められる、治療内容を可視化しやすいといった大きなメリットがあります。
治療に臨む際は、メリット・デメリットの両面を理解したうえで、信頼できる医師と相談しながら、自分たちに合った選択をしていくことが大切です。不安を抱えている方も、まずは一度医師に相談してみるとよいでしょう。
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