不妊治療とは?治療の種類や一般的な流れ、費用をわかりやすく解説

「妊活をしているけれど、なかなか妊娠しない…」
そんな悩みを抱え、不妊治療を考え始めた方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、不妊治療といっても具体的にどんな方法があるのか、どんな流れで進むのかなど、わからないことが多く、不安に感じてしまうこともあるかもしれません。
本記事では、不妊治療の基本知識から主な治療法の種類、治療の進め方、かかる費用や保険適用の有無まで、初めての方にもわかりやすく解説します。
不妊治療に向き合う第一歩として、ぜひ最後まで参考にしてください。
不妊治療とは?
不妊治療とは、妊娠を希望して一定期間(通常1年)夫婦生活を送っても妊娠に至らない場合に行われる医療的サポートのことです。
妊娠しづらい原因を特定し、排卵や受精のプロセスを支援することで、妊娠の可能性を高めます。
なお、不妊治療は大きく分けて、比較的負担の少ない「一般不妊治療」と、専門的な技術を用いた「生殖補助医療」の2つに分けられます。
以下では、それぞれの治療法について詳しく見ていきましょう。
一般不妊治療
一般不妊治療とは、妊娠の可能性を自然に近い形で高めることを目的とした、初期段階の治療法です。体への負担や費用も比較的少ないため、多くの方が最初に取り組む治療となります。
代表的な治療内容には、以下のようなものがあります。
- タイミング法:排卵日を予測し、妊娠しやすいタイミングで夫婦生活を持つ方法
- 排卵誘発剤の使用:排卵が不安定な場合に薬で排卵を促す
- ホルモン療法:月経周期や排卵を整えるためにホルモンバランスを調整する
- 人工授精:採取した精子を子宮内に注入して妊娠を促す方法
これらの治療は、医師による検査結果に基づいて適切な方法が選ばれます。改善が見られない場合には、次の段階である「生殖補助医療」へ進むケースもあります。
生殖補助医療
生殖補助医療(ART)とは、妊娠の可能性を高めるために、受精や胚の培養などを医療技術でサポートする高度な治療法です。一般不妊治療で妊娠に至らなかった場合に行われます。
代表的な治療法には以下のようなものがあります。
- 人工授精(AIH):洗浄・濃縮した精子を子宮内に直接注入する
- 体外受精(IVF):卵子と精子を体外で受精させてから子宮に戻す
- 顕微授精(ICSI):1つの精子を卵子に直接注入して受精させる
これらの治療は、卵管の閉塞、精子の運動率の低下、原因不明の不妊など、さまざまなケースに対応することができます。
ただし、身体的・経済的負担が大きくなる傾向があるため、医師と相談しながら慎重に進めることが大切です。
一般的な不妊治療の流れ
不妊治療は、いきなり体外受精などの高度な治療に進むわけではなく、段階的に進めていくのが一般的です。
ここからは、不妊治療の一般的なステップについて、順を追って見ていきましょう。
1.不妊検査
不妊治療の最初のステップは、不妊の原因を調べるための検査です。
妊娠には排卵・受精・着床といった複数の要素が関係しているため、検査は男女ともに行うのが一般的です。
主な検査内容は以下のとおりです。
- 女性側の検査:女性側の検査:ホルモン検査、超音波検査、卵管造影など
- 男性側の検査:精液検査、ホルモン検査など
不妊の原因は、排卵障害・卵管閉塞・子宮の異常・精子の数や運動率の低下などさまざまです。
そのため、検査によって原因を明らかにすることで、最適な治療方針を立てやすくなります。
2.タイミング法
不妊治療の初期段階として、まずはタイミング法に取り組むのが一般的です。
タイミング法では、以下のような方法で医師が排卵日を正確に判断し、その時期に合わせて性交を行うことで、自然妊娠の可能性を高めます。
- 基礎体温の測定
- 超音波検査による卵胞の観察
- 尿中ホルモンの検査
なお、排卵が不安定な場合には、排卵誘発剤を併用するケースもあります。
タイミング法は体への負担が少ないメリットがありますが、精子や卵子そのものに問題がある場合は、妊娠に至らないケースも少なくありません。一定期間試しても効果が見られない場合は、次のステップに進むことが推奨されます。
3.人工授精
人工授精(AIH)は、排卵のタイミングに合わせて、事前に採取した精子をカテーテルで子宮内に直接注入する方法です。自然妊娠に近い形で受精の確率を高めることができます。
人工授精が選ばれる主なケースは以下のとおりです。
- 精子の数や運動率がやや低い場合
- 性交がうまく行えない場合(性交障害など)
- 原因不明の不妊が続いている場合
処置自体は数分で終わり、痛みもほとんどないため、身体への負担も軽めです。
数回試しても妊娠に至らない場合は、体外受精などの次のステップを検討することになります。
4.体外受精
体外受精(IVF)は、卵子と精子を体外で受精させ、受精卵(胚)を子宮内に戻す治療法です。一般不妊治療や人工授精で妊娠に至らなかった場合に選択されます。
体外受精の大まかな流れは次のとおりです。
- 排卵誘発剤で複数の卵子を育てる
- 採卵し、体外で精子と受精させる
- 胚を数日間培養し、着床しやすい状態で子宮へ戻す
体外受精は、卵管閉塞や高年齢による不妊など、妊娠のハードルが高いケースでも有効な治療とされます。
一方で費用や身体的な負担も大きくなるため、医師と相談のうえで慎重に判断しましょう。
5.顕微授精
顕微授精(ICSI)は、1つの精子を細い針で卵子に直接注入して受精させる高度な生殖補助医療です。精子の数が極端に少ない場合や、受精障害がある場合に行われます。
通常の体外受精では、精子と卵子を一緒にして自然に受精するのを待ちますが、顕微授精では医師が顕微鏡下で受精を助けるため、より確実に受精させることができます。
顕微授精が採用される主なケースは、以下のとおりです。
- 精子の運動率が極めて低い場合
- 精子の数がごくわずか、または回収が難しい場合
- 体外受精で受精に失敗した経験がある場合
体への負担は体外受精と同程度ですが、より高度な技術が求められる分、費用もやや高額になります。
不妊治療のステップを進めるタイミングは?
不妊治療は段階的に進められるのが一般的ですが、「どのタイミングで次のステップへ進むべきか」は人それぞれ異なります。
年齢、治療の回数、身体的・精神的な負担など、さまざまな要素を総合的に判断しなければなりません。
なお、あくまでも一例ですが、以下のような判断基準があります。
- タイミング法を3~6周期試しても妊娠しない場合:人工授精へ移行
- 人工授精を数回行っても成果が出ない場合:体外受精へ進む
- 40歳以上の方や明確な原因がある場合:早期に体外受精や顕微授精を検討
治療は早ければよいというわけではありませんが、年齢が上がるほど妊娠率が下がる傾向があるため、医師と相談しながら柔軟に治療方針を見直していくことが大切です。
不妊治療にかかる費用
不妊治療にかかる費用は、治療方法の内容や実施回数によって大きく異なります。
以下は、各治療法1周期あたりの費用目安です。
治療法 | 保険適用後の費用目安(1回あたり) |
---|---|
タイミング法 | 5,000~8,000円 |
人工授精 | 8,000~12,000円 |
体外受精 | 100,000~200,000円 |
顕微授精 | 120,000~250,000円 |
体外受精や顕微授精などの生殖補助医療は費用が高額になりやすいため、経済的な負担を考慮した治療計画が重要です。
保険の適用範囲や助成制度についても併せて確認しておきましょう。
不妊治療には保険が適用される
2022年4月から、不妊治療の多くが公的医療保険の対象となりました。
そのため、体外受精や顕微授精といった高度な不妊治療についても、原則3割の自己負担で受けられるようになっています。
保険適用の対象となる主な治療は以下のとおりです。
- タイミング法
- 排卵誘発剤の使用
- 人工授精(AIH)
- 体外受精(IVF)
- 顕微授精(ICSI)
- 一部の凍結保存やホルモン治療など
ただし、年齢や治療回数には制限があり、体外受精の場合は40歳未満で6回まで、40歳以上43歳未満で3回までが上限です。
詳しい条件は医療機関で確認し、保険の適用可否を事前に確認しておくことが大切です。
まとめ
不妊治療は、妊娠の可能性を高めるために段階的に進められる医療行為です。
タイミング法や人工授精、顕微授精などさまざまな治療法がありますが、どの治療法が最適かは人によって異なります。
そのため、不妊にお悩みの場合は、一人で悩まずにまずは医師へ相談することが大切です。信頼できる医師と相談しながら、無理のないペースで不妊治療を進めていきましょう。