不妊治療の助成金制度とは?金額や条件、利用の流れをわかりやすく解説

「不妊治療ってお金がかかると聞いたけど、助成制度ってまだ使えるの?」
「保険適用になったのは知ってるけど、それ以外にも支援ってあるのかな…」
このような疑問を持ちながら、不妊治療を検討している方も多いのではないでしょうか。
実際、2022年4月の保険適用によって国の助成金制度は終了しているものの、現在でも都道府県や市区町村によっては独自の助成制度が残っており、条件を満たせば費用の一部を補助してもらえるケースがあります。
そこで本記事では、不妊治療に関する助成金制度の概要や現状、利用できる条件、申請の流れまでをわかりやすく解説します。
治療費の不安を少しでも軽くできるよう、ぜひ参考にしてください。
不妊治療に関する助成金制度の現状
不妊治療に関する助成金制度とは、経済的負担が大きい不妊治療に対して、国や自治体などが治療費の一部を補助してくれる制度です。
かつては、厚生労働省が主体となって「特定不妊治療費助成制度(旧制度)」を実施しており、体外受精や顕微授精などに対して1回あたり最大30万円の助成が受けられていました。
ただし、2022年4月に不妊治療の保険適用が開始されたことに伴い、国の助成制度は終了しています。
一方で、各都道府県や市区町村では、独自に助成金制度を設けて支援を続けている地域もあります。そのため、今後は自治体ごとの制度内容をチェックすることが重要です。
【都道府県別】不妊治療に関する助成金制度一覧
多くの都道府県では、国の助成制度終了後も独自に不妊治療支援を続けています。
以下では、各都道府県ごとの不妊治療に関する助成金制度をまとめましたので、お住まいの地域の自治体ホームページにて詳細を確認してみてください。
北海道・東北地方
中部地方
関東地方
近畿地方
中国・四国地方
九州地方・沖縄
市区町村でも不妊治療の助成金制度が設けられている場合も
自治体によっては、都道府県とは別に市区町村レベルで不妊治療の助成制度を設けていることがあります。
たとえば文京区では、不妊治療の中でも「先進医療」や「自由診療」にかかる費用について、領収書と医療機関の証明書を添えて申請することで助成を受けられます。
なお、申請期限や必要書類の形式などは自治体によって異なるため、詳細は各自治体の公式サイトで確認するようにしましょう。
埼玉県には先進医療の助成金制度がないため、民間保険の利用も検討すべき
2025年8月現在、埼玉県では先進医療に関する助成金制度は用意されていません。
体外受精や顕微授精の一部には「先進医療」として指定されている治療法があり、これらを選択する場合は全額自己負担となるケースもあります。
そのため、埼玉県で先進医療による不妊治療に備えるためには、民間の医療保険や不妊治療に対応した特約を活用することをおすすめします。
民間の生命保険に加入していれば、人工授精などの治療にかかった費用を「手術給付金」として受け取れるケースも少なくありません。また「先進医療特約」を付加すると、先進医療の費用を保険でカバーできるため、不妊治療の自己負担を大幅に軽減可能です。
助成制度に頼るだけでなく、保険商品を組み合わせて利用することで、将来的な治療費の見通しが立てやすくなるでしょう。
東京都の不妊治療に関する助成金制度
埼玉県では不妊治療を含む先進医療の助成金制度は用意されていませんが、一例としてどのような助成がされているのかを知っておくことは大切です。
そこでここからは、自治体別の不妊治療に関する助成金制度の例として、東京都の助成金制度を紹介します。
東京都では、不妊や不育に悩む夫婦を支援するため、都独自の助成制度を設けています。
内容は主に「不妊検査・一般不妊治療」と「体外受精・顕微授精に伴う先進医療費」の2つに分かれており、それぞれに応じた助成が受けられます。
以下では、なかでも先進医療に対する助成制度について、対象者・助成金額・助成回数の上限といった制度の各要素を具体的に紹介します。
助成金制度の具体例として、参考にしてみてください。
助成の対象となる先進医療
東京都が実施する「特定不妊治療費(先進医療)助成事業」では、保険適用された不妊治療に併せて実施される「国が認定した先進医療技術」が助成対象となります。
具体的には、以下のような治療内容が対象です。
- SEET法(子宮内膜刺激術)
- タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養
- 子宮内膜スクラッチ(子宮内膜擦過術)
- PICSI(ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術)
- ERA / ERPeak(子宮内膜受容能検査)
- 子宮内細菌叢検査(子宮内フローラ検査、EMMA / ALICEなど)
- IMSI(強拡大顕微鏡を用いた形態学的精子選択術)
- 二段階胚移植法
- 膜構造を用いた生理学的精子選択術 (マイクロ流体技術を用いた精子選別)
- ネオセルフ抗体(抗ネオセルフβ2グリコプロテインI複合体抗体検査 )
ただし、先進医療や助成を受けるには、厚生労働省の登録医療機関を受診しなければなりません。
また、全額自己負担のみの先進医療や自由診療は助成の対象外となります。
助成の対象となる人
東京都が実施する「特定不妊治療費(先進医療)助成事業」の対象者は、以下の条件のすべてを満たす必要があります。特に、事実婚状態の方は、法律婚の方とは要件が異なるため、それぞれ確認が必要です。
- 【共通の要件】
-
- 保険診療として特定不妊治療を受けていること(自由診療は対象外)
- 先進医療を厚生労働省の登録医療機関で受診していること
- 当該治療について、他の医療費助成を受けていないこと
- 治療開始日における妻の年齢が43歳未満であること
- 【法律婚の方】
-
- 治療開始日から申請日まで、夫婦が婚姻関係にあること
- 治療開始日から申請日までの間、夫婦いずれか一方が継続して東京都内に住民登録していること(申請者は都内在住者)
- 【事実婚の方】
-
- 申請期間中、他に法律上の配偶者がいないこと
- 治療開始日から申請日まで、夫婦ともに東京都内の同一住所に住民登録していること
- 治療開始日から申請日まで、同一世帯であること(住民票に「夫(未届)」等の記載など)
- 同一世帯でない場合は「2人が事実婚関係にあること(別世帯の理由含む)」と「治療により出生した子を認知する意向があること」という申立書が必要
申請前に、これらの条件に該当するかどうかをしっかり確認しておきましょう。
助成金額
東京都では、不妊に関する先進医療にかかった費用の10分の7の金額について、最大15万円の助成を行っています。
助成回数の上限
東京都では、先進医療を用いた不妊治療の助成金制度について、「保険適用の不妊治療と併用する場合」という条件を設けています。
そのため、助成を受けられる回数も保険適用の回数と同じです。
妻の年齢(治療開始日基準) | 保険適用回数 | 先進医療の助成上限回数 |
---|---|---|
40歳未満 | 6回まで | 6回まで |
40歳〜43歳未満 | 3回まで | 3回まで |
不妊治療の助成金制度を利用する流れ
不妊治療にかかる費用を少しでも軽減するためには、助成制度を適切に活用することが重要です。
ただし、助成を受けるには所定の手続きが必要であり、流れを把握しておかないと申請期限に間に合わなかったり、必要書類が不足していたりするリスクもあります。
ここでは、実際に助成金を受け取るまでの基本的な流れを5つのステップに分けてご紹介します。
各自治体で助成金制度の内容を確認する
まずは、自分が住んでいる自治体の助成制度の内容を確認しましょう。
不妊治療に関する助成金は都道府県や市区町村ごとに制度内容が異なり、対象となる治療や助成金額、申請方法もさまざまです。
自治体の公式ホームページや「不妊治療 助成金 〇〇市」といったキーワードで検索し、申請要件・助成対象・申請期間・必要書類を必ず確認しましょう。
対象医療機関で治療を受ける
不妊治療の助成金を利用するには、自治体が指定する対象医療機関で治療を受けることが前提となります。
特に先進医療に対する助成を希望する場合は、厚生労働省に登録された「先進医療実施医療機関」で治療を受けなければなりません。
治療を開始する前に、医療機関が助成制度の対象かどうか、事前に医療機関や自治体に確認しておくと安心です。
助成金受診証明書やその他の必要書類を発行する
治療が終了したら、助成金の申請に必要な書類を揃えましょう。
なかでも重要なのが、医療機関で発行される「受診等証明書」や領収書です。これは、実際に治療を受けた内容や金額を証明するために必須の書類となります。
証明書の発行には数日かかることが多いため、早めに依頼しておくと安心です。
併せて、以下のような書類も必要になる場合があります。
- 医療機関発行の受診証明書
- 領収書(原本)
- 住民票や戸籍謄本(婚姻関係を証明するもの)
- 身分証のコピー
- 振込先口座情報
書類の様式や必要書類の種類は自治体によって異なるため、必ず該当自治体のホームページで最新情報を確認しましょう。
必要書類を自治体へ提出する
必要書類がすべて揃ったら、指定の方法で自治体に提出します。
提出方法は多くの自治体で郵送または窓口への持参が基本ですが、「1回の治療が終了した日から1年以内」といった申請期限が設けられているケースもあるため注意が必要です。
なお、提出書類に不備があると再提出が必要となり、審査に時間がかかってしまうこともあります。
提出前にチェックリストなどを活用し、漏れがないかしっかり確認してから提出するようにしましょう。
助成金の受け取り
書類が受理され、審査が完了すると、助成金の支給が決定されます。
通常は、自治体から「助成決定通知書」などの書面が送付され、指定した銀行口座に助成金が振り込まれる流れです。
支給までの期間は自治体によって異なりますが、申請から1〜2か月程度かかるケースもあります。
まとめ
不妊治療の費用は決して安くはありませんが、自治体の助成制度を活用することで、経済的な負担を軽減できる可能性があります。
2022年4月の制度改正により、国の助成制度は終了しましたが、現在でも独自に不妊治療支援を継続している都道府県や市区町村は多いです。
たとえば東京都では、先進医療に対して最大15万円の助成が受けられる制度があり、他の自治体でもさまざまな支援策が用意されています。
ただし、助成制度を活用するためには、対象となる治療内容や医療機関の条件、提出書類、申請期限などを事前にしっかり確認することが重要です。
少しでも不安や疑問がある場合は、早めに医療機関や自治体の窓口に相談してみましょう。制度を正しく理解しておくことで、安心して不妊治療に向き合うことができます。