不妊治療の流れ|妊娠までにかかる期間や初診のタイミング、費用を解説
「不妊治療を始めたいけれど、何から取り組めばいいのかわからない」
「妊娠までにどのくらい時間がかかるの?」
不妊治療を検討している方の中には、このような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
不妊治療は初診から検査、一般不妊治療、生殖補助医療(ART)、妊娠判定という流れで進むのが一般的です。
ただし、治療の進め方は人によって大きく異なるため、必ずしも「この流れが正解」というものはありません。焦らず自分に合ったペースで取り組むことが大切です。
本記事では、不妊治療の基本的な流れや平均的な期間、初診のタイミング、費用の目安までをわかりやすく解説します。
不妊治療を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
一般的な不妊治療の流れ
不妊治療は「いきなり高度な医療を受ける」というものではなく、初診から検査を経て、段階的に進めていくのが一般的です。
具体的には、以下のようなステップで治療が進みます。
- 初診
- 不妊検査
- 一般不妊治療
- 生殖補助医療(ART)
- 妊娠判定
ここからは、それぞれのステップでどんな検査・治療を行うのかについて解説します。「不妊治療は何から始めるの?」と疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
初診
不妊治療の第一歩は、専門クリニックでの初診です。ここでは問診を中心に、月経周期や生理の状態、妊娠や出産の経験、持病や過去の治療歴などを詳しく確認します。
問診の際は、医師へ「妊娠を希望している期間」「不安に感じていること」「治療に対する希望」などを伝えておきましょう。質問があれば確認しておくことで、その後の不妊治療を安心して進められるようになるはずです。
不妊検査
初診後は、不妊の原因を明らかにするために検査を行います。
女性はホルモン検査や超音波検査、卵管造影検査などがあり、排卵や卵管の状態を確認します。男性は精液検査などで精子の数や運動率を調べるのが通常です。
そして、検査結果から排卵障害・卵管の異常・精子の問題など妊娠を妨げている要因を特定し、適切な治療法を決定します。
検査は生理1周期にわたって複数回実施されることもあるので、時間を要する場合があることを覚えておきましょう。
一般不妊治療
不妊検査で大きな異常が見つからなかった場合、まずは体への負担が少ない「一般不妊治療」から始めます。
これは自然な妊娠の流れをサポートする治療で、比較的低コストで取り組みやすいのが特徴です。
一般不妊治療における主な治療法には、以下のようなものがあります。
| 治療法 | 内容 |
|---|---|
| タイミング法 | 排卵日を予測し、妊娠しやすい時期に性交を行う |
| 排卵誘発剤 | 排卵が不安定な場合に薬で卵子の排出を促す |
| ホルモン療法 | ホルモンバランスを整えて月経周期や排卵を改善する |
| 人工授精(AIH) | 精子を洗浄・濃縮し、子宮内に直接注入する |
これらを数周期試し、妊娠に至らない場合は次のステップである生殖補助医療(ART)が検討されます。
生殖補助医療(ART)
一般不妊治療で成果が得られなかった場合や、不妊検査によって明確な原因が見つかった場合は、「生殖補助医療(ART)」へ進みます。
ARTは体外で受精や胚培養を行う高度な治療で、妊娠の可能性を大きく高められるのが特徴です。
主な治療法としては、以下のようなものがあります。
| 治療法 | 内容 |
| 体外受精(IVF) | 卵子と精子を体外で受精させ、培養後に子宮へ戻す |
| 顕微授精(ICSI) | 顕微鏡下で1つの精子を卵子に直接注入して受精させる |
| 胚凍結・融解移植 | 受精卵を凍結保存し、適切なタイミングで子宮へ移植する |
ARTは高い妊娠率が期待できますが、費用や身体的負担も大きくなるため、医師と相談しながら進めることが重要です。
妊娠判定
治療後は、妊娠が成立したかを確認する「妊娠判定」を行います。
一般的には胚移植から約2週間後に血液検査でhCGホルモンの値を測定し、妊娠の有無を判断します。数値が基準を満たしていれば妊娠成立とされ、その後は超音波検査で胎嚢や心拍の確認へと進みます。
一方、結果が陰性の場合は次周期以降の治療計画を再検討する流れとなります。
妊娠判定は結果に一喜一憂しやすい場面ですが、焦らず医師と相談しながら次のステップを考えることが大切です。
不妊治療にかかる期間
不妊治療にかかる期間は人それぞれ異なりますが、平均すると約2年ほどといわれています。
初診から検査、一般不妊治療を経て、必要に応じてARTへ進むまでには複数の周期が必要となるためです。
ただし、年齢や体質、治療法の選択によって結果が出るまでの期間には差があり、数か月で妊娠に至る方もいれば、数年以上かかるケースもあります。
大切なのは「平均にとらわれず、自分に合ったペースで治療を続けること」です。焦らず医師と相談しながら治療を進めましょう。
不妊治療に初めて行くタイミング
日本生殖医学会によると、一般的には1年間妊娠を希望しても子どもを授からない場合は、受診を検討することが推奨されています。
また、女性が35歳以上の場合や、生理不順・持病など妊娠に影響する要因がある場合は、妊活開始から半年を目安に早めの受診が望ましいとされています。
とはいえ、不妊治療の開始時期について「こうなったら治療すべき」というような一律の基準はありません。
「同じお産はない」と言われるように、不妊治療を始めるべきタイミングも人によって異なるので、不安に感じたタイミングで一度医師に相談してみるとよいでしょう。
不妊治療の初診ではなんて言えばいい?
不妊治療の初診では、生理周期や月経の状態、これまでの妊娠・出産経験、持病や服薬の有無を正直に伝えることが大切です。
さらに「できるだけ自然妊娠に近い治療を希望したい」「費用を抑えたい」など、自分の希望や不安を具体的に話すと、医師が治療方針を立てやすくなります。また、基礎体温の記録や過去の検査データがあれば持参すると診察がスムーズです。
不妊に悩む方の中には病院に行くこと自体をためらってしまう方もいるかもれません。
しかし、不妊治療を行っている病院・クリニックの医師や看護師は、不妊に悩む方々に寄り添い、親身になって話を聞いてくれます。
「不妊について打ち明けるのは辛い」「私だけ妊娠できないなんて…」と悩んでいる方も、まずは相談してみることから始めてみてください。
一般不妊治療からARTへステップアップするタイミング
不妊治療はタイミング法や人工授精といった一般不妊治療から始めるのが一般的ですが、一定期間妊娠に至らない場合は体外受精や顕微授精といった生殖補助医療への移行を検討します。
ステップアップのタイミングとしては、タイミング法を数周期、人工授精を数回試しても結果が出ないときが一般的です。
ただし、年齢が高い方や、卵管閉塞・重度の精子異常など原因が明確なケースでは、早めにARTへ進むこともあります。
治療の進め方は一律ではないので、自分に合った方法を医師と相談しながら柔軟に判断することが大切です。
不妊治療にかかる費用
不妊治療は内容によって費用も大きく変わります。
現在では保険適用によって以前より自己負担は減りましたが、それでも1回ごとの費用は少なくありません。
主な不妊治療の費用目安は以下のとおりです。
| 治療法 | 保険適用後の費用目安(1回あたり) |
|---|---|
| タイミング法 | 5,000~8,000円 |
| 人工授精 | 8,000~12,000円 |
| 体外受精 | 100,000~200,000円 |
| 顕微授精 | 120,000~250,000円 |
なお、薬の種類や追加検査によって金額は変動するため、実際の費用は医療機関で確認するようにしましょう。
不妊治療には保険が適用される
2022年4月から、不妊治療の多くが公的医療保険の対象になりました。
自己負担は原則3割となり、従来よりも費用を抑えて治療を継続しやすくなっています。
対象となる主な治療法は以下のとおりです。
- タイミング法
- 排卵誘発剤の使用
- 人工授精(AIH)
- 体外受精(IVF)
- 顕微授精(ICSI)
- 一部の胚凍結・融解移植やホルモン治療
ただし、体外受精や顕微授精といった生殖補助医療については年齢や回数の制限がある点には注意が必要です。
不妊治療の流れに関するよくある質問
最後に、不妊治療の流れに関するよくある質問を取り上げ、回答していきます。似たような疑問をお持ちの方は、ぜひここで解消しておきましょう。
不妊治療で仕事を休む頻度はどれくらい?
治療の内容によって異なりますが、タイミング法や人工授精では月1〜3回程度の通院で済むことが多く、大きな休みは不要です。
一方、体外受精や顕微授精では採卵や移植のスケジュールに合わせて平日通院が必要になり、仕事を半日〜数日休まなければならないケースもあります。
具体的な通院スケジュールは患者さまごとに異なるので、医師と相談しながら決定しましょう。
不妊治療はどの段階が一番痛い?
不妊治療の痛みは人によって感じ方が異なりますが、一般的に「採卵」が最も負担が大きいといわれています。
卵子を取り出す際に針を卵巣に刺すため、一時的な下腹部の痛みや違和感を覚える方が多いです。
ただし、麻酔を使用するケースも多く、強い痛みを感じにくくする工夫がされています。
そのほか、子宮卵管造影検査では一時的に生理痛に似た痛みを伴う場合がありますが、数分で治まるのが一般的です。
痛みについて不安がある場合は、治療に進む前に医師へ相談しておくことをおすすめします。
まとめ
不妊治療は、初診から検査、一般不妊治療、生殖補助医療(ART)、妊娠判定という段階を経て進められるのが一般的です。
平均すると妊娠に至るまでに約2年かかるといわれていますが、年齢や体質、治療方針によって必要な期間は大きく異なります。
そのため、焦らず自分に合ったペースで取り組むことが大切です。
医師や看護師は、患者さまの悩みや不安に寄り添い、常に親身になって治療に取り組んでいます。治療の流れについて少しでも不安がある場合は、ぜひ気兼ねなくご相談ください。

