不育症の原因とは?6つのリスク因子と検査方法、なりやすい人の特徴を解説

不育症の原因とは?6つのリスク因子と検査方法、なりやすい人の特徴を解説

「流産を何度も繰り返しているのは、何か原因があるのだろうか」
「次もまた妊娠が続かなかったらどうしよう」

このような不安を感じていませんか?

2回以上の流産や死産がある場合、不育症が疑われます。

不育症の背景には、抗リン脂質抗体や子宮の形の異常、染色体の要因、ホルモン異常など、いくつかのリスク因子が関係していることがあります。そのため、原因を正しく知り、自分に合った検査や治療につなげることが大切です。

本記事では、不育症の主な原因を6つのリスク因子に分けてわかりやすく解説するとともに、検査方法や治療法、なりやすい人の特徴についても紹介します。

不安を少しでも整理し、次の妊娠に向けた一歩を踏み出すための参考にしてください。

この記事の監修者
恵愛生殖医療医院 院長 林 博
恵愛生殖医療医院 院長林 博

1997年、東京慈恵会医科大学卒業。同大学病院にて生殖医学に関する臨床および研究に携わる。

2011年4月恵愛病院生殖医療センター開設。生殖医療専門医・臨床遺伝専門医の資格等数多くの資格を資格を保有。

自ら体外受精・顕微授精や不育治療を経験しており、患者さま目線の治療を心がけている。

プロフィールを見る
Index目次

不育症とは?

不育症とは、妊娠は成立するものの、流産や死産を繰り返してしまい、妊娠を継続できない状態を指します。一般的には、流産や死産を2回以上経験している場合に不育症と考えられます。

1回の流産であれば、胎児の染色体異常など偶発的な要因によるケースが多く、必ずしも異常とは限りません。

しかし、流産を2回以上経験した場合には、体の状態や血液・免疫、子宮の形など、何らかの要因が関係している可能性があります。

なお、不育症についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

【関連記事】不育症とは?原因・検査内容・治療方法や費用、助成金制度について解説

不育症はどれくらいの確率で起こる?

不育症が起こる確率は、決して高くはありません。

実際、日本生殖医学会によると、2回連続で流産を経験する確率は約5%、3回以上となると約1%程度といわれています。

数字だけ見ると「自分だけが特別なのでは」と不安に感じてしまう方もいるでしょう。

しかし、流産そのものは決して珍しいものではなく、妊娠全体の約10〜15%で起こるとされています。

その中には偶発的なものも多く含まれ、確率的には2回以上の流産を経験する可能性もゼロではありません。

不育症の原因となる6つのリスク因子

以下では、不育症に関係するとされる主な6つのリスク因子について、それぞれ具体的に解説します。

抗リン脂質抗体症候群

不育症の原因の中でも代表的なのが、「抗リン脂質抗体症候群」です。これは、本来体を守るはずの免疫が誤って自分の体を攻撃してしまう自己免疫の異常の一種です。

この抗体が存在すると、血液が固まりやすくなり、胎盤の血流が妨げられることがあります。その結果、赤ちゃんへ十分な栄養や酸素が届かなくなり、流産や死産につながる可能性があるのです。

抗リン脂質抗体症候群は、特に妊娠初期〜中期の流産を繰り返す場合に関与していることが多く、不育症の中でも比較的明確な原因として知られています。

なお、自覚症状はほとんどないため、血液検査を受けて初めて判明するケースが一般的です。

しかし、原因が特定できれば、ヘパリンや低用量アスピリンを用いた治療によって、妊娠を維持できる可能性が高まるとされています。

子宮形態異常

子宮の形や構造に問題がある場合、不育症の原因になる可能性があります。

子宮は受精卵が着床し、赤ちゃんが成長する大切な場所であるため、その形状に異常があると、妊娠の継続に影響が出ることがあるのです。

代表的な子宮形態異常には、以下のようなものがあります。

  • 中隔子宮:子宮の内部に仕切りのような壁がある状態
  • 双角子宮:子宮がハート型のように分かれている状態

これらの異常があると、受精卵がうまく着床できなかったり、着床しても十分に成長できなかったりすることがあり、流産のリスクが高まる可能性があります。

夫婦いずれかの染色体異常

不育症の原因として、夫婦どちらかに染色体の異常があるケースもあります。

ここでいう染色体異常とは、数の異常ではなく、構造の変化(転座など)を指すことが多く、本人には自覚症状がないのが特徴です。

代表的なものとして「均衡型転座」があり、これは染色体の一部が入れ替わっている状態です。本人の健康にはほとんど影響がありませんが、受精卵に受け継がれる際にバランスが崩れると、胎児の発育がうまくいかず、流産につながることがあります。

このような染色体の異常は外見や体調からは判断できないため、血液による染色体検査(核型検査)によって確認します。

なお、染色体異常が見つかった場合でも、必ずしも妊娠・出産ができないわけではありません。

体外受精や着床前検査などの選択肢によって、妊娠に至るケースもあります。

胎児(胎芽)の染色体異常

流産の原因として多いとされているのが、胎児側の染色体異常です。

染色体の数や構造に異常があると、受精卵が正常に成長できず、妊娠初期の段階で発育が止まってしまうことがあるのです。

胎児の染色体異常は受精の段階で偶然起こるもので、両親に明確な異常がなくても発生する可能性があります。

具体例としては、染色体の数が1本多い・少ないといった異常(トリソミーなど)がありますが、受精の過程で起こるため、事前に完全に防ぐことは難しいのが現状です。

内分泌異常

ホルモンバランスの乱れ(内分泌異常)も、不育症に関係する要因のひとつです。

妊娠を維持するためには、排卵や着床、妊娠継続を支えるホルモンが適切に分泌されている必要があります。

そのため、例えばプロゲステロン(黄体ホルモン)が不足していると、子宮内膜が十分に厚くならず、受精卵が着床しにくくなったり、妊娠を維持しにくくなったりすることがあるのです。

そのほか、以下のようなホルモンに関する異常も、不育症と関連する場合があります。

  • 甲状腺機能異常(甲状腺ホルモンの過不足)
  • 高プロラクチン血症(排卵や黄体機能に影響)
  • 血糖値異常(糖代謝の乱れによる影響)

なお、内分泌異常が見つかった場合でも、薬によるホルモン補充や内服治療によってコントロールできることが多く、適切に対応することで妊娠の継続が期待できるでしょう。

血液凝固異常

血液が固まりやすい体質(血液凝固異常)も、不育症の原因のひとつとされています。

血液は本来、出血を止めるために固まる働きを持っていますが、この働きが強すぎると、血管の中に小さな血栓(血のかたまり)ができやすくなります。

妊娠中にこのような状態が起こると、胎盤の血流が妨げられ、赤ちゃんに必要な酸素や栄養が十分に届かなくなる可能性があります。

その結果、妊娠の継続が難しくなり、流産や死産につながることがあると考えられているのです。

なお、血液凝固異常については抗リン脂質抗体症候群とは異なり、不育症との関連や治療効果のエビデンスが十分ではありません。

一般的なスクリーニングとしての必要性も現時点では確立していないため、検査の必要性は医師と相談して判断するようにしましょう。

不育症は原因がわからないケースも多い

不育症は、検査を行っても明確な原因が特定できないケースも少なくありません

不育症の中には、複数の要因が複雑に関係している場合や、現在の医療では検出が難しい要素が影響しているケースもあるからです。

とはいえ、原因が特定できない場合でも、適切な管理や治療によって出産に至るケースは多くあります。

不安を抱えたままにせず、医師と相談しながら今後の方針を検討していくことが大切です。

不育症の原因を特定するための検査とは

不育症の原因を明らかにするためには、子宮の状態やホルモン、血液の性質、遺伝的要因などを総合的に調べる必要があります。

原因はひとつに限らないことも多いため、複数の検査を組み合わせて確認するのが一般的です。

主な検査内容は以下のとおりです。

分類検査名内容
子宮の状態内診子宮や卵巣の位置・大きさなどを確認
経腟超音波検査子宮や卵巣の状態を画像で確認
子宮卵管造影検査子宮の形や卵管の通りを確認
子宮鏡検査子宮内部を直接観察し異常の有無を確認
血液・体質ホルモン測定LH・FSH・プロゲステロン・甲状腺機能などを確認
血糖値測定糖代謝異常の有無を確認
血液凝固検査必要に応じて血液が固まりやすい体質の有無を確認
自己抗体検査抗リン脂質抗体など免疫異常を確認
その他染色体検査夫婦の染色体構造の異常を確認

これらの検査は一度にすべて行うわけではなく、流産の回数や経過、年齢などを踏まえて、医師と相談しながら段階的に進めていきます。

また、染色体検査については女性だけでなく、男性側も含めて確認することが重要です。

夫婦双方の状態を把握することで、より適切な治療方針を立てやすくなります。

不育症の治療法

不育症の治療法としては、以下が挙げられます。

  • ヘパリンおよび低用量アスピリン併用療法
    血液が固まりやすい体質や抗リン脂質抗体が関与している場合に行われる治療です。血液を固まりにくくすることで胎盤の血流を保ち、妊娠の継続をサポートします。現在、不育症の治療として広く用いられている方法のひとつです。
  • 夫リンパ球免疫療法
    免疫の異常が関係している場合に検討されることがある治療法です。ただし、有効性についてはさまざまな見解があり、現在では実施していない医療機関も多く、一般的な治療とはいえません。当院でも本治療は行っていません。

ただし、不育症の治療は一律ではなく、原因や体の状態に合わせて個別に検討されます。

明確な原因が見つからない場合、経過観察や生活管理を行いながら妊娠を目指すケースもあるでしょう。

いずれのケースでも、専門の医療機関と相談しながら治療方針を決めていくことが大切です。

まとめ

不育症は、妊娠は成立するものの流産や死産を2回以上経験することを指し、主な原因としては免疫異常や子宮の形態異常、染色体の問題、ホルモンバランスの乱れ、血液の性質などが挙げられます。

不育症は適切な検査によって原因を把握し、それに応じた治療や管理を行うことで、妊娠・出産に至る可能性がある疾患です。

実際に、治療を経て出産に至る方も多くいます。

大切なのは、不安を抱えたままにせず、早めに医療機関へ相談することです。

自分の体の状態を正しく知り、適切なサポートを受けながら、次の妊娠に向けて一歩ずつ進んでいきましょう。