不育症とは?原因・検査内容・治療方法や費用、助成金制度について解説

「妊娠はできるのに、なぜか出産までたどり着けない」
「流産が続いていて、不育症なのではないかと不安に感じている」
このような悩みを抱えていませんか。
不育症とは、妊娠は成立するものの、流産や死産を2回以上経験して、赤ちゃんを出産できない状態を指します。しかし、適切な検査で原因を特定し、治療を行うことで、無事に出産に至るケースも少なくありません。
本記事では、不育症の定義や原因をはじめ、検査内容や治療方法、費用の目安、助成金制度までをわかりやすく解説します。不安を解消し、次の一歩を踏み出すための参考として、ぜひ最後まで参考にしてください。
不育症とは
不育症とは、妊娠は成立するものの、流産や死産を2回以上経験し、出産に至らない状態を指します。不妊症が「妊娠しにくい状態」であるのに対し、不育症は「妊娠はできても継続が難しい状態」である点が大きな違いです。
なお、流産は妊娠22週未満、死産は妊娠22週以降に赤ちゃんが亡くなることをいいます。流産の原因はさまざまですが、特に妊娠初期の場合は胎児の染色体異常など、赤ちゃん側の偶発的な要因によるケースが多いとされています。
そのため、原因を調べても明確な理由が見つからないことも少なくありません。
しかし、流産を2回以上経験する場合には、体の状態や体質が関係している可能性もあるため、適切な検査によって原因を確認することが重要です。
流産の割合から考える不育症を疑うべきタイミング
流産は決して珍しいものではなく、妊娠全体の約10〜15%に起こるとされています。そのため、1回の流産だけで異常があると判断されることはほとんどありません。
もちろん、確率的には流産が2回起こることもあり得ます。しかし、頻度は決して高いとはいえないため、流産を2回以上経験した場合は、不育症の可能性を考慮する必要があります。
不育症が疑われる場合は、一度専門の医療機関で相談することが大切です。原因を明らかにすることで、適切な治療につながり、出産できる可能性を高められる場合もあります。
不育症の原因となるリスク因子とは
不育症は、妊娠しても流産や死産を繰り返してしまう状態ですが、すべてのケースで原因が明確に特定できるとは限りません。
一方で、検査によって妊娠の継続に影響する要因が見つかることもあります。
不育症の原因として挙げられる主なリスク因子は、以下のとおりです。
- 抗リン脂質抗体陽性(症候群)(血液が固まりやすくなる体質)
- 子宮形態異常(子宮の形の先天的な異常)
- 夫婦いずれかの染色体異常
- 胎児(胎芽)の染色体異常
これらの要因があると、受精卵がうまく成長できなかったり、着床後の発育が妨げられたりすることがあります。ただし、複数の要因が重なっている場合や、検査を行っても原因が見つからない場合もあります。
不育症の原因を正しく把握することは、適切な治療方法を選択するうえで重要なステップです。流産を繰り返している場合は、早めに検査を検討することで、今後の妊娠に向けた対策を立てやすくなるでしょう。
不育症かどうかはどんな検査でわかる?
不育症は自覚症状がほとんどないため、原因を特定するには、医療機関での検査が必要です。また、原因は女性側ではなく、男性側にあるケースも少なくないので、夫婦で検査を行うことが大切です。
以下では、男性・女性それぞれが受ける不育症検査の内容を紹介します。
女性側が受ける検査
女性側が受ける主な不育症検査は以下のとおりです。
【子宮の状態を調べる検査】
- 内診
- 経腟超音波検査
- 子宮卵管造影検査
- 子宮鏡検査
子宮の形態異常やポリープ、癒着などがないかを確認します。
【血液・体質を調べる検査】
- ホルモン測定(LH、FSH、プロゲステロン、プロラクチン、甲状腺機能)
- 血糖値測定
- 血液線溶凝固因子検査(プロテインC・S活性、第XII・XIII因子など)
- 自己抗体検査(抗核抗体、抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラントなど)
血液が固まりやすい体質や自己免疫の異常がないかを確認します。
その他の検査
- 感染症検査(B型・C型肝炎、梅毒、クラミジアなど)
- 染色体検査
なお、すべての検査を一度に行うわけではなく、妊娠歴や流産の経過に応じて必要な項目を選択します。詳しくは、受診しているクリニックへ相談するようにしましょう。
男性側が受ける検査
男性側の不育症検査で中心となるのは、染色体検査です。
染色体検査では、血液を採取し、染色体の数や構造に異常がないかを確認します。
見た目や日常生活に問題がなくても、「均衡型転座」などの染色体異常を保因しているケースがあり、その場合、受精卵に染色体の偏りが生じやすく、流産につながる可能性があります。
このように、夫婦で検査を行うことで、原因をより正確に把握しやすくなり、治療の選択肢も広がる点がメリットです。
検査に不安がある場合は、医師と相談しながら進めていきましょう。
不育症の主な治療法
検査によって不育症の原因やリスク因子が明らかになった場合、その内容に応じた治療を行うことで、妊娠の継続率を高められる可能性があります。
ただし、すべての方に同じ治療が適用されるわけではありません。体質や検査結果、これまでの妊娠経過を踏まえて、個別に方針が決められます。
以下では、不育症の主な治療方法について見ていきましょう。
ヘパリンおよびアスピリン併用療法
ヘパリンおよびアスピリン併用療法とは、抗リン脂質抗体が関与する不育症に対して行われる、血液を固まりにくくする治療法です。血栓ができやすい体質の場合、胎盤への血流が滞り、流産につながる可能性があるため、そのリスクを下げることを目的とします。
具体的には、妊娠成立後に胎嚢が確認された段階から、低用量アスピリンの内服とヘパリンの皮下注射(1日2回)を継続します。これにより、妊娠の継続率を高められることが報告されており、抗リン脂質抗体陽性例では標準的な治療の一つとされています。
ただし、出血傾向や血小板減少などの副作用が起こる可能性もあるため、定期的な血液検査を行いながら医師の管理下で慎重に進めることが重要です。
夫リンパ球免疫療法
夫リンパ球免疫療法は、以前から行われてきた不育症の治療法の一つです。妊娠中、赤ちゃんは母体にとって「自分とは異なる存在」です。そのため、免疫の働きが過剰になると、妊娠の継続に影響を及ぼす可能性があると考えられてきました。
この治療では、夫のリンパ球を採取し、母体へ投与することで、赤ちゃんを受け入れやすい免疫状態をつくることを目的とします。ただし、その作用の仕組みは十分に解明されておらず、近年では有効性が明確に示されていないとの報告もあります。
さらに、治療によって新たな自己抗体が誘導される可能性が指摘されており、かえって不育症のリスクにつながる懸念もあります。そのため、現在では実施していない医療機関も増えています。
治療を検討する際は、効果やリスクについて十分に説明を受け、納得したうえで判断することが大切です。
なお、当院では夫リンパ球免疫療法は行っておりません。
不育症の検査・治療にかかる費用
不育症の検査や治療にかかる費用は、実施する内容や保険適用の有無によって異なります。
以下では、当院における不育症検査・治療の費用を紹介します。
【不育症検査の費用】
| 項目 | 保険(3割負担) | 自費(税込) |
|---|---|---|
| 抗核抗体 | ー | 1,100円 |
| 抗カルジオリピンIgG抗体 | ー | 2,200円 |
| 抗カルジオリピンIgM抗体 | ー | 3,300円 |
| 抗CLβ2GPI-IgG抗体 | ー | 3,300円 |
| 抗CLβ2GPI-IgM抗体 | ー | 3,300円 |
| ループスアンチコアグラント(LAC) | ー | 2,200円 |
| 抗フォスファチジルエタノールアミンIgG抗体 | ー | 4,400円 |
| 抗フォスファチジルエタノールアミンIgM抗体 | ー | 4,400円 |
| 抗プロトロンビン抗体 | ー | 5,500円 |
| β2GPIネオセルフ抗体(先進医療) | 44,000円 | |
| プロテインS活性 | ー | 2,200円 |
| プロテインC活性 | ー | 2,200円 |
| 凝固第XII因子 | ー | 2,200円 |
| 凝固第XIII因子 | ー | 2,200円 |
| PT, APTT, フィブリノーゲン | ー | 2,200円 |
| プラスミノーゲン | ー | 2,200円 |
| アンチトロンビン(AT) | ー | 2,200円 |
| FDP | ー | 2,200円 |
| Dダイマー | ー | 1,300円 |
| NK細胞活性 | ー | 5,500円 |
| Th1/2 | ー | 13,200円 |
| 25OHビタミンD | ー | 1,100円 |
| 末梢血染色体検査 | 8,850円 | ー |
【不育症治療の費用】
| 項目 | 保険(3割負担) | 自費(税込) |
|---|---|---|
| 在宅自己注射管理指導料 | 780円 | ー |
| 注射針加算 | 390円 | ー |
| バイアスピリン100mg | 2円 | 6円 |
| ヘパリンカルシウム5000単位 | 110円 | 410円 |
| 5週から36週まで行ったとすると | 約8万円 | ー |
なお、現在不育症検査・治療の多くは保険適用の対象となっています。ただし、保険適用の有無は検査内容や条件によって異なるため、事前に医療機関へ確認しましょう。
不育症の検査・治療で利用できる助成金制度
不育症の検査や治療には一定の費用がかかりますが、国や自治体による助成制度を利用できる場合があります。
たとえば、子ども家庭庁では、不育症検査に対する助成事業を実施しており、対象となる検査費用の一部が補助される仕組みが整えられています。対象条件や助成額は年度や制度改正により変わることがあるため、最新情報を確認することが大切です。
また、自治体ごとに独自の助成制度を設けているケースもあります。
当院の所在地である埼玉県でも、不育症検査費用の一部を補助する制度があり、所定の条件を満たすことで申請が可能です。助成の対象となる検査内容や申請期限が定められているため、医療機関と連携しながら手続きを進めると安心でしょう。
費用面の不安を軽減するためにも、治療を始める前に利用できる制度を確認しておくことが重要です。
まとめ
不育症とは、妊娠は成立するものの、流産や死産を2回以上経験してしまう状態を指します。流産自体は決して珍しいものではありませんが、2回以上経験している場合には、体質や子宮の状態、染色体などが関係している可能性があります。
不育症の原因には、抗リン脂質抗体、子宮形態異常、染色体異常などさまざまなリスク因子があり、検査によって明らかになるケースもあります。原因に応じた治療を行うことで、妊娠を継続できる可能性を高められることも少なくありません。
また、検査や治療には費用がかかりますが、国や自治体の助成制度を利用できる場合もあります。不安を一人で抱え込まず、まずは専門の医療機関に相談し、現状を正しく把握することが大切です。適切なサポートを受けながら、次の妊娠に向けた一歩を踏み出していきましょう。