不妊治療は痛い?辛いと感じるポイントや痛みを和らげる方法を紹介

不妊治療は痛い?辛いと感じるポイントや痛みを和らげる方法を紹介

「不妊治療は痛いって聞くけれど、自分にも耐えられるのかな…」
「どんな場面でどのくらい痛いのか、具体的に知っておきたい」

このような不安を抱えながら、不妊治療を始めるか迷っている方も多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、不妊治療では採血や注射、検査、採卵などの場面で痛みやつらさを感じる可能性があります。

しかし、痛みの程度や感じ方には大きな個人差があり、多くの場合は工夫や対策で軽減が可能です。

この記事では、不妊治療のなかで「痛い」「辛い」と感じやすい主な場面と、その背景となるからだの状態をわかりやすく整理します。

あわせて、事前にできる痛み対策や、少しでも不安を和らげるためのポイントも紹介します。

この記事の監修者
恵愛生殖医療医院 院長林 博

1997年、東京慈恵会医科大学卒業。同大学病院にて生殖医学に関する臨床および研究に携わる。

2011年4月恵愛病院生殖医療センター開設。生殖医療専門医・臨床遺伝専門医の資格等数多くの資格を資格を保有。

自ら体外受精・顕微授精や不育治療を経験しており、患者さま目線の治療を心がけている。

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Index目次

不妊治療は痛い?辛いと感じるポイントとは

不妊治療で感じる痛みには、以下のようなものがあります。

  • 採血や排卵誘発剤の注射による痛み
  • 採卵による痛み
  • 子宮卵管造影検査による痛み
  • 経腟超音波検査による痛み
  • OHSS(卵巣過剰刺激症候群)による痛み

ここからは、それぞれの痛みについて詳しく見ていきましょう。

採血や排卵誘発剤の注射による痛み

不妊治療では、ホルモン値を確認するための採血や排卵誘発剤の注射を行う機会があり、人によっては痛みを感じるケースも多いです。

採血の痛みは「チクッとする程度」が一般的ですが、繰り返し行うことで血管が硬くなってしまったり、緊張で腕に力が入ってしまったりすると、刺す際の違和感が強くなることもあります。

また、排卵誘発剤の注射は自己注射で行うケースもあり、こちらも「針を刺すときの刺激」や「薬液が入るときの軽いしみる感覚」を覚える人がいます。

ただし、痛みの感じ方には個人差があり、慣れてくると気にならなくなる人も多いです。

なお、痛みをできるだけ抑えるためには、次のような工夫が効果的です。

  • 注射する場所を冷やして感覚を鈍くする
  • 針を刺す位置を毎回ずらして皮膚への負担を軽減する
  • 深呼吸しながら力を抜くことで痛みを感じにくくする

痛みへの不安が強い場合は、看護師に事前に伝えておくとよいでしょう。

採卵による痛み

採卵は、排卵誘発後に成熟した卵子を取り出すための処置で、痛みを感じやすいステップのひとつです。

採卵では、膣から細い針を卵巣へ刺して卵子を吸引するため、身体への刺激が比較的強くなります。また、採卵前の膣洗浄でも痛みや違和感を感じるケースもあるでしょう。

ただし、多くのクリニックでは麻酔を併用するため、処置中の痛みを感じないのがほとんどです。

また、採卵後は、卵巣を刺激した影響で以下のような症状が出ることがあります。

  • 生理痛に近い下腹部の痛み・重だるさ
  • お腹の張り
  • 軽い出血や倦怠感

通常は数日で落ち着きますが、痛みが強い・腫れが引かない場合は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の可能性もあるため、早めに医師へ相談しましょう。

子宮卵管造影検査による痛み

子宮卵管造影検査(HSG)は、子宮や卵管の通り具合を確認するために造影剤を注入してX線で撮影する検査です。

不妊治療のなかでも「痛みを感じやすい検査」と言われることが多く、事前に不安を感じる方も少なくありません。

痛みの原因は、造影剤が子宮内に流れ込むときに子宮が収縮したり、卵管に圧がかかるためです。

人によっては生理痛に似た鈍い痛みや下腹部がギュッと締め付けられるような感覚が出ることがあります。

特に、卵管が詰まり気味の場合は圧力が強くかかり、より痛みを感じやすい傾向があります。

ただし、痛みの程度には大きな個人差があり、「違和感程度だった」「気づいたら終わっていた」という人も多いため、過度に心配する必要はないでしょう。

痛みを和らげるためには、検査前に深呼吸をして体をリラックスさせることや、医師に痛みが不安なことを伝えておくことが有効です。クリニックによっては鎮痛剤の使用や、痛みが強い方に合わせた注入方法を工夫している場合もあります。

経腟超音波検査による痛み

経腟超音波検査は、不妊治療の診察時にもっとも頻繁に行われる検査のひとつです。

膣内に細長いプローブ(細い棒状の機器)を挿入して、子宮や卵巣の状態を確認します。

痛みの強さは個人差が大きく、多くの場合は軽い圧迫感や違和感程度で済むことがほとんどです。

痛みが出る主な原因は、プローブの挿入時に体が緊張して膣周りに力が入ってしまうことや、子宮の角度・位置によって器具が当たりやすくなることです。

特に卵巣が腫れている周期や、生理前後で子宮が敏感になっているときは、いつもより痛みを感じやすい場合があります。

痛みを軽減するポイントとしては、以下が役立ちます。

  • 挿入時は深く息を吐き、力を抜くことを意識する
  • 「痛みが不安」と事前に伝えることで、医師が挿入角度やスピードを調整してくれる
  • 検査前にトイレを済ませておく

経腟エコーは治療を進めるうえで欠かせない検査ですが、多くの医療機関で痛みに配慮して実施されているため、過度に心配する必要はありません。

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)による痛み

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)は、排卵誘発剤の影響で卵巣が普段より大きく腫れてしまう状態で、体外受精などの治療で見られることがあります。

卵巣が腫れると周囲の組織が引き伸ばされるため、下腹部の張りや痛み、重だるさを感じやすくなり、「お腹がパンパンで苦しい」「歩くと響く」といった症状が出ることもあります。

軽度の場合は、生理痛に似た腹痛や軽い違和感程度で治まることが多いですが、重症化すると以下のような症状が現れることがあります。

  • 急激な腹部膨満感
  • 吐き気・食欲低下
  • 体重増加(水分貯留)
  • 呼吸のしづらさ

重度の場合は入院管理が必要になることもあるため、強い痛みや急な体調変化があるときは、早めに医療機関へ連絡することが重要です。

不妊治療後に感じる痛み

不妊治療では、処置そのものだけでなく、治療後に体の変化が原因で痛みを感じることもあります。

以下では、治療後に感じる主な痛みについて、詳しく見ていきましょう。

妊娠成立時に感じる「着床痛」

不妊治療後、妊娠が成立したタイミングで「着床痛」と呼ばれる下腹部の痛みや違和感を覚える方がいます。

着床痛とは、受精卵が子宮内膜に根を張る際に起こる生理的な反応で、チクチク・ズーンとした軽い痛みや、生理前のような重さとして感じられることが一般的です。

感じる時期は、採卵や移植から約1週間前後が多いとされています。痛みが続く場合は、早めに病院へ相談しましょう。

流産や異所性妊娠による痛み

妊娠が順調に進まない場合、流産や異所性妊娠によって腹痛が生じることがあります。

異所性妊娠(子宮外妊娠)とは、受精卵が卵管など子宮以外の場所に着床する状態で、強い下腹部痛や片側だけの鋭い痛みが出るのが特徴です。

一方、流産の場合は、生理痛より強い下腹部の痛みや腰の重だるさを伴うことが多く、出血が増えてくるのが一般的です。

どちらのケースでも、早めに病院へ相談するようにしましょう。

不妊治療の痛み対策|事前にできることは?

ここでは、不妊治療に臨む前に取り入れておきたい痛み対策を紹介します。

どれも難しいものではなく、少し意識するだけで治療全体の負担が軽くなるはずです。できるところからぜひ取り入れてみてください。

痛みが不安なことを事前に相談する

不妊治療で痛みをできるだけ軽減するためには、まず「痛みが不安であること」を医師や看護師に正直に伝えることがとても大切です。

痛みの感じ方には個人差があるため、医療スタッフ側も患者さんの不安を把握していないと、標準的な方法で進めてしまうことがあります。

しかし、あらかじめ伝えておくことで、痛みが出やすい処置をゆっくり行ったり、使用する器具のサイズを調整したり、必要に応じて鎮痛剤を追加するなど、あなたに合った方法に変更してもらえる可能性があります。

麻酔や鎮痛剤の使用を検討する

採卵時の痛みが不安な場合は、麻酔(静脈麻酔・局所麻酔)を使用することを検討しましょう。

静脈麻酔の場合は、眠っている間に採卵が終わるため、処置中の痛みをほぼ感じない方が大半です。一方、局所麻酔の場合は意識がある状態ですが、「圧を感じる程度」となるよう痛みを抑えながら進められます。

どの麻酔を選ぶかは、体質や不安の強さによっても異なるので、クリニックに相談することが大切です。

日ごろからストレスをためない

不妊治療の痛みの感じ方は、身体の状態だけでなく心の状態にも大きく左右されます。

ストレスや緊張が強いと筋肉がこわばり、内診や注射の際に痛みを感じやすくなることも少なくありません。

不妊治療は先が見えにくく、気持ちが不安定になりやすいものですが、日常生活の中でストレスを溜め込みすぎないことが、結果的に「痛みを軽減する」ことにもつながります。

リラックスできる服装で治療に臨む

不妊治療の際は、以下のようにできるだけリラックスした状態で臨むことが痛みの軽減にもつながります。

  • ウエストにゆとりのあるボトムス(ワンピースやゆったりパンツなど)
  • すぐに脱ぎ着しやすいトップス(前開きや柔らかい素材)
  • 体温調整がしやすい薄手の羽織りもの

内診や経腟超音波検査、採血などは緊張で体が強張ってしまうと、痛みを感じやすくなるため、身体を締めつけない服装を選ぶことが大切です。

不妊治療の痛みに関するよくある質問

最後に、不妊治療中に多くの方が気になる“痛み”に関する代表的な質問に答えていきます。

採卵と子宮卵管造影検査はどっちが痛い?

採卵と子宮卵管造影検査では、痛みの種類が異なります。

採卵は麻酔を使用するケースが多いため、処置中の痛みはほとんど感じない方が多い一方、麻酔が効きにくい場合や採卵後に下腹部の張り・鈍痛が出ることがあります。

一方、子宮卵管造影検査は麻酔を使わずに進めることが多く、造影剤を注入する際に生理痛のような強い痛みを感じやすいのが特徴です。

不妊治療で一番痛いのは?

不妊治療で「一番痛い」と言われやすいのは、個人差はあるものの子宮卵管造影検査と採卵後の下腹部痛です。

ただ、いずれの痛みも一時的なものがほとんどで、医師に相談することで痛み止めの使用や処置の調整が可能です。

まとめ

不妊治療では、採血・注射・採卵・子宮卵管造影検査など、痛みを伴う場面がいくつかあります。

しかし、多くの痛みは一時的なものであり、事前の準備や医師への相談によって軽減できるものばかりです。

「どれくらい痛いのかわからない」という不安が大きいほど身体が緊張し、実際の痛みを強く感じやすくなるため、心身のケアをしながら治療に臨むことが大切です。

どうしても不安な場合は、事前に医師や看護師に伝えることで対策をしてもらえるので、ヒアリングの際などに相談してみましょう。