体外受精

体外受精とは

体外受精とは、卵子と精子を体の外で受精させ、育った受精卵(胚)を子宮に戻す不妊治療の方法です。

1978年に世界ではじめての体外受精・胚移植による赤ちゃん(Louise Brown ルイーズブラウン)がイギリスで誕生してから45年以上が経過しました。

そのルイーズさん自身も自然妊娠で出産されており、体外受精で生まれたお子さんでも将来は自然に妊娠できることも証明されています。

日本でもこれまでに100万人以上の赤ちゃんが体外受精によって誕生しており、現在では全出生児数の約10%つまり10人に1人が体外受精による出生児となっています。

現在では技術も大きく進歩し、安全性と信頼性の高い治療法として、多くの医療機関で広く行われています。

体外受精は、妊娠を望むご夫婦にとって、確かな選択肢のひとつとなっているのです。

どのような場合に体外受精・胚移植が必要か?

不妊治療のゴールは妊娠し健康な赤ちゃんをえることであるという事は言うまでもありません。そして、現在の不妊治療の中では体外受精・胚移植が最も妊娠成立する確率が高い治療法です。

しかし、本治療法には患者さんに対していろいろな負担や副作用があります。たとえば、治療内容や患者様の年齢によっては保険外診療となり治療費が自己負担となります。そして排卵誘発剤や採卵に伴うリスクがあり、また超音波検査や注射などで通院回数も多くなります。

したがって、当院では体外受精・胚移植による治療が本当に必要と考えられる患者さんにのみ本治療法をおすすめしています。

当院において体外受精・胚移植を受けるために必要なこと

  1. 初回体外受精前血液検査
    月経1-3日目に行います。卵巣の予備能をみるホルモンや抗精子抗体、感染症などの検査です。
  2. 精液検査
    精子数や運動率が極端に悪い場合は顕微受精を併用するために必要です。
  3. 子宮内腔の方向と大きさを調べる検査
    初回採卵時に同時に行います。胚移植のチューブがスムーズに入るかどうかみる検査です。
  4. 上記を施行した上で、当院の体外受精胚移植法の同意書をいただいた方
    初回採卵時に提出していただきます。

体外受精・胚移植の流れ(新鮮胚移植の場合)

体外受精は基本的には以下のプロセスにより成り立っています。
※クリニックすると各STEPの詳細に遷移します。

  1. STEP01
  2. STEP02
  3. STEP03
  4. STEP04
  5. STEP05
  6. STEP06
  7. STEP07
  8. STEP08
  9. STEP09

STEP1排卵誘発(卵子の入っている卵胞を複数発育させる為に行う)

体外受精・胚移植が成功するか否かは「良い卵子をとれるかどうか」にかかっているといっても過言ではなく、非常に大切なプロセスです。排卵誘発法には以下の方法があり個々の患者さんに一番あったものを選択します。

当院では、初回の方はPPOS法またはクロミフェン法をお勧めしております。

  1. PPOS法
  2. GnRHアゴニスト(ブセレキュアなど)法
    • ロング法
    • ショート法
  3. GnRHアンタゴニスト(セトロタイドなど)法
  4. 上記以外の方法
    • 自然周期法
    • クロミフェン(クロミッドなど)法
    • レトロゾール法

まず、GnRHアゴニスト法(ロング法)ですが、この方法は排卵をほぼ完全に抑制できるという利点があり、採卵日や時間をコントロールするのに優れ、体外受精・胚移植の排卵誘発法として長きにわたりスタンダードな方法でした。

しかし、ゴナドトロピン注射の量が増えてしまうということ、卵巣過剰刺激症候群の頻度が高いこと、などの欠点があり近年では徐々に減ってきています。

当院ではより負担の少ないPPOS法、GnRHアンタゴニスト法、クロミフェン法を主に選択しております。

PPOS法について簡単にご説明します

治療周期の月経1~3日目に来院してください。経膣超音波検査で卵巣や子宮に異常がないか、また血液検査で基礎ホルモン値を測定し卵巣の状態を確認します。

問題がなければ、原則初回受診日当日からホルモン注射(ゴナドトロピン製剤)を開始します。

注射と同時に黄体ホルモン製剤の内服を開始します。黄体ホルモン製剤は排卵を抑える作用があり、1日に2回から3回黄体ホルモン製剤(デュファストンまたはメドロキシプロゲステロン)の内服を行い、不慮の排卵を抑えていきます。

注射は原則自己注射で行っていただきます。一回の注射の量は通常150~300単位です。ゴナドトロピン製剤にはいくつか種類があり、FSH製剤(ゴナールF、レコベルなど)、hMG製剤、hCG製剤(オビドレルなど)、薬の種類と投与量は患者の卵巣の状態や反応をみて使いわけます。

患者様の安全と体外受精の成績向上を第一に、当院ではリコンビナント(遺伝子組み換え型)製剤を使用しております。一部の患者様を除き、尿由来製剤は使用しておりませんのでご了承ください。

月経8日目頃より経膣超音波エコー検査を行い卵胞の個数と大きさを計測します。卵胞の発育状態やホルモン値をみながら卵子の成熟時期を見極めていきます。

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STEP2卵子の最終的な成熟を促す(GnRHアゴニスト点鼻薬または hCG注射)

その後、排卵誘発を続け卵子が十分に成熟していると判断されれば、GnRHアゴニスト(点鼻薬)または hCG注射(場合により両方)を使用します。

GnRHアゴニスト(点鼻薬)または hCG注射には卵子の最終的な成熟をうながす働きがあり投与後36-38時間で排卵がおこります。よって投与34~35時間後の排卵直前の卵子を採取します。GnRHアゴニスト(点鼻薬)21時と22時に左右1回ずつ(計4回)鼻に噴霧していただきます。hCG注射の場合は21時に1回のみ注射をします。

ゴナドトロピン製剤投与開始後10日前後で採卵になります。GnRHアンタゴニスト注射は1~3回隔日または連日注射します。

原則自己注射となりますが、会社や自宅近くの医療機関で注射をうけることもできます。その場合当院の紹介状をお渡しいたしますので、先方の指示にしたがってください。

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STEP3採卵(卵子を採取すること)

膣より超音波でみながら細い針で卵胞を刺して卵子を吸引します。その場で顕微鏡を用いて卵子の有無を調べます。原則全身麻酔下で行うため痛みはほとんどなく、5~15分程で終わります。

また、ごく稀に出血や感染などの合併症があります。全身麻酔をかけることが多いため採卵当日は朝から絶飲食としてください。採卵後30分から1時間は卵巣出血などの副作用防止の為、ベッド上安静となります。安静時間終了後、診察を行います。

採卵当日は激しい運動や入浴は避けてください。シャワーはかまいません。特に異常がなければ、翌日から通常の生活をしてかまいません。

初回採卵時、胚移植用のチューブが子宮の中に入るかどうか試験的に挿入します(MockET)。もしスムーズに入らなければ子宮の入り口を拡げる処置が必要になることがあります。

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STEP4精子の調整、媒精

原則、精子は病院内の採精室での採取をお願いしております。 採卵前の3~7日間は禁欲していただき、マスタベーション法で採取していただきます。どうしてもご来院できない場合には精子の採取後3時間以内(少しでも早い方が良いです)に病院に届けてください。

精子は低温に極めて弱いため必ず冷やさないよう人肌程度に温めながらなるべく早くお持ちください。専用の容器もご用意しております(有料)。

精子はスイムアップ法という方法で良い運動精子のみを集め、さらに1時間ほど培養します。

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STEP5受精確認

採卵、媒精翌日に受精の有無を確認します。受精した卵には精子と卵子由来の二つの前核と二つの極体が認められます。

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STEP6胚の分割確認、評価

2 ~ 6日目に胚の分割を確認していきます。胚の形態評価を行い、移植に適する良好胚を確認します。形態良好胚とは胚の分割スピードが速く、卵細胞一つ一つが均一でぶつぶつしたフラグメントの無いものです。

当院では、最先端のインキュベーター(孵卵器)を導入しております。AIがタイムラプス(インターバル撮影)画像を活用し、受精卵(胚)の発育を自動的に常時監視して、胚の質を判定します。

AI技術により、より良い胚が判定できるようになり、胚移植当たりの妊娠率の向上が期待できます。(AIによる受精卵の判定は保険適応でないため、現在は原則行っておりません)

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STEP7胚移植

全胚凍結となる場合も多いのですが、新鮮胚移植の場合採卵後2 ~ 5日目に行います。胚移植日を採卵終了後に予約しますので指定された日時に来院してください。形態良好胚を特殊な移植用チューブを用いて子宮内へ移植します。この時は痛みもなく麻酔の必要はありません。安静時間終了後は帰宅可能です。移植胚数は多胎妊娠防止のため原則1個とします。

胚移植後は激しい運動など無理をしなければ通常通りの生活をしても差し支えありません。卵巣がはれる卵巣過剰刺激症候群と呼ばれる副作用の危険がある場合は安静が必要となります。

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STEP8黄体補充療法

排卵誘発を行った場合、特にGnRHアゴニストやアンタゴニストを使用した場合は黄体機能不全を起こしやすくなります。エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)のバランスを保つために、その補充が必要となります。これを黄体補充療法といいます。必要期間は、主に採卵後2週間の妊娠判定までの黄体期で、妊娠成立後も必要に応じて補充していきます。

卵胞ホルモンは貼り薬または内服を使用、黄体ホルモンは膣剤または内服を使用します。

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STEP9妊娠判定

採卵後およそ2週間後に、血液中のhCGを測定し妊娠しているかどうかがわかります。妊娠していれば約1週間後に経膣超音波エコーにより胎嚢の位置や数を確認します。順調であればさらに1~2週間後には胎児心拍が確認できます。体外受精・胚移植後の妊娠は、流産(約20%)や子宮外妊娠(約1%)の発生頻度が自然妊娠に比べて若干高いと考えられており、出血やお腹の痛みがある場合には注意が必要です。

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体外受精・胚移植の現状と成功率に影響を与える因子について

1.日本における体外受精・胚移植の現状

表1に日本における体外受精・胚移植の現状を示します。年間56万周期以上の体外受精が行われており、出生児数は8万5千人以上、累計では100万人を超えています。2023年の新鮮胚移植周期あたりの妊娠率は23.1%、生産率は16.7%、凍結融解胚移植周期あたりの妊娠率は40.5%、生産率は28.8%でした。

日本の体外受精・胚移植の現状(2023年)
治療周期総数 出生児数 累積出生児数
新鮮胚(卵)を用いた治療 285,511 4,274 279,089
体外受精 89,854 1,772 148,072
顕微授精 195,657 2,502 131,017
凍結胚(卵)を用いた治療 276,153 80,774 724,271
合計 561,664 85,048 1,003,360

2.体外受精・胚移植の成功率に影響を与える因子

女性の年齢

30歳をピークに妊娠率が徐々に低下し40歳以上では妊娠率が5%以下にまで低下すると言われています。

下記図は日本における体外受精・胚移植の年齢別妊娠率を示します。

これは原始卵胞の減少による採卵数の減少、染色体異常卵の増加、卵子の質の低下が関係しています。このような卵子の予備能をよく反映する指標として月経1-5日目のFSH値とAMH(抗ミュラー管ホルモン)値があり、FSHが高値、AMH値が1.0未満の場合などには体外受精・胚移植の成績は不良である可能性があります。

現在、残念ながらこのような高齢化に対する根本的な治療はありません。

日本における体外受精年齢別成績(2023年)
日本における体外受精年齢別成績(2023年)

子宮内膜症・子宮腺筋症

子宮内膜症が存在すると発育卵胞数が低下し採卵数が低下します。子宮内膜症がかなり進行している場合には腹腔鏡手術を体外受精・胚移植前に行うと良い結果が得られる場合があります。

また子宮腺筋症(子宮内膜症が子宮筋層内にできてしまう病気)がひどい場合に子宮内膜の発育が不良となり胚の着床が妨げられる可能性があります。

このような場合には体外受精前に3ヶ月間GnRHアゴニストの投与し子宮を小さくしてから行うと良い場合があります。

粘膜下筋腫・子宮内膜ポリープ

子宮内腔に筋腫がある(粘膜下筋腫)場合や子宮内膜ポリープがある場合には胚の着床が妨げられるため、このような疾患が疑われる場合には子宮鏡検査や子宮鏡下子宮筋腫核出術などを体外受精・胚移植前に行う必要があります。

多嚢胞性卵巣症候群

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のある患者さんは卵巣内にたくさんの小さな卵胞が存在しており、排卵誘発剤を投与すると多数の卵胞が発育し卵胞ホルモン(エストラジオール)値が異常に高くなり体内のホルモンバランスが崩れ子宮内膜の状態や卵子の質に悪影響を及ぼすと考えられます。また卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクも高く妊娠が成立した場合には重症のOHSSを起こす可能性があります。このためPCOSを前もって腹腔鏡下卵巣多孔手術で治療してから体外受精・胚移植を行った方が良い場合があります。

卵管水腫

卵管水腫があると、卵管性不妊症になるだけでなく胚の着床に悪影響があるといわれております。卵管を切除または摘出する手術を行ってからの体外受精・胚移植をおすすめします。

当院の体外受精実績

埼玉県内でもトップクラスの症例数を誇る当院の体外受精実績は、以下の通りです。

体外受精でご懐妊された患者様数
6781名(2025年11月30日現在)

その他の当院に実績に関しましてはこちらをご覧ください。

AI活用による妊娠率向上の取り組み

当院では、世界初のAIによる画像判定技術を応用したタイムラプスインキュベータ(培養器)を導入しております。(AIによる受精卵の判定は保険適応でないため、現在は原則行っておりません)

詳しくはこちらをご覧ください。

体外受精・胚移植のメリットとデメリット

体外受精・胚移植は、次のような方に特に効果が期待できます。

体外受精・胚移植のメリット(効果的なケース)

体外受精・胚移植は、次のような方に特に効果が期待できます。

  1. 卵管に問題がある場合

    両側の卵管がつまっている方や、卵管を手術で取り除いている方に特に有効な方法です。

    また、お腹の中の炎症や癒着(臓器どうしがくっついてしまう状態)がある場合にも、体外受精・胚移植が適していると考えられます。

  2. 精子の状態が良くない場合

    精子の数が少ない、動きが悪いなどの男性不妊がある場合に効果的です。

    人工授精を5~6回以上行っても妊娠に至らない場合も、体外受精・胚移植を検討する対象となります。

  3. 免疫性不妊の場合

    女性の体内に精子を攻撃する抗体(抗精子抗体)ができてしまい、精子と卵子がうまく出会えない場合に有効とされます。

  4. 子宮内膜症がある場合

    子宮内膜症による癒着や炎症が疑われる場合にも、体外受精・胚移植が適していると考えられます。

  5. 年齢が35歳以上の方の場合

    妊娠率は30歳頃から徐々に低下し、40歳以上で大きく下がるとされています。

    35歳を超えて一般的な不妊治療を行っても妊娠に至らない場合は、早めの移体外受精をおすすめします

  6. 原因不明不妊の場合

    半年以上タイミング法や人工授精を行っても妊娠しない場合に検討します。

    これらのケースでは、一般的な不妊治療より体外受精の方が妊娠の可能性が高くなります。

体外受精・胚移植のデメリット(リスク)

体外受精・胚移植には、次のようなリスクがあることも理解しておく必要があります。

  1. 採卵時のリスク

    採卵の際、まれにお腹の中で出血を起こしたり、感染を起こすことがあります。

    重症の場合には入院や手術が必要になることもあります。

  2. 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

    排卵を促す薬の影響で卵巣が大きく腫れてしまうことがあり、これを卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼びます。

    軽い症状は比較的よく見られますが、現在では重症化する頻度は少なくなっています。

    しかし、重症化するとお腹に水がたまったり、血液が濃くなって血栓症(血管がつまる病気)を起こすリスクがあります。

    若い方、やせている方、多嚢胞性卵巣症候群の方は特に注意が必要です。

  3. 赤ちゃんへの影響

    体外受精・胚移植による妊娠では、早産や低出生体重児、先天異常などの発生率が自然妊娠と比べてわずかに高いという報告があります。

    ただし、体外受精そのものの手技が原因というよりも、不妊症カップルの背景にある要因が影響している可能性も指摘されています。

  4. 異所性(子宮外)妊娠

    子宮内に胚を戻しても、約1%の確率で異所性(子宮外)妊娠が起こることがあります。

  5. 多胎妊娠(双子・三つ子など)

    複数の胚を移植すると、多胎妊娠のリスクが高まります。

    多胎妊娠は早産や低出生体重児、妊娠高血圧症などのリスクが高くなるため、当院では原則として移植する胚の数を1個に制限しています。

  6. 治療が途中で中止になる可能性

    卵胞が十分に育たない、採卵しても卵子が得られない、受精しない、胚が育たないなどの理由により、予定していた治療を最後まで行えないこともあります。

  7. 不測の事態による影響

    地震や火災、水害、突然の停電などの災害により、胚を保管している機器の破損や停止などが起こる可能性はゼロではありません。

    また、当院が閉院となる場合には事前にご連絡いたしますが、医師の急逝など予測できない事情により、十分なご説明ができないまま体外受精・胚移植が中止となる可能性もあります。

体外受精・胚移植は、適切なケースで行えば高い効果が期待できる治療法です。一方で、いくつかのリスクも伴いますので、メリットとデメリットの両方について十分にご理解いただくことが大切です。

治療を始める際には、担当医とよく相談し、ご自身が納得した上で進めていきましょう。ご不明な点や不安なことがあれば、遠慮なく担当医にお尋ねください。

体外受精・胚移植を実施しない場合の不利益と危険性について

不妊症は通常の病気とは異なり、命にかかわることはありません。よって体外受精・胚移植をやるかどうかは全て患者さま・ご夫婦自身で決定していただくことになります。

ただし、体外受精・胚移植をお勧めするご夫婦はこれ以外の一般的な不妊治療では妊娠する可能性がかなり低いと考えられ、たとえば人工授精を続けてもいたずらに時間と費用を無駄にしてしまう可能性があります。前述のように妊娠のしやすさにおけるもっとも重要な要素は女性の年齢です。悔いの残らないような治療法を選択してください。

体外受精・胚移植を実施しない場合の他治療法等の選択肢について

他治療法の選択肢について

体外受精・胚移植の適応によっては他の治療法の選択肢もあります。卵管閉塞による卵管性不妊症の場合、腹腔鏡または卵管鏡による卵管形成術などにより卵管機能が改善することがあります。

また、軽度の男性不妊症の場合は、泌尿器科的診察により精索静脈瘤などが発見されることもあり外科的治療により改善できる場合があります。

体外受精・胚移植をやめる目安

体外受精・胚移植での成功率は限られており、複数回施行しても妊娠に至らない場合、いつまで治療を続行するかどうか悩まれることがあります。

あくまでも治療をやめるか続けるかはご夫婦で話し合われて決めていただくことで我々は治療の要請があれば最大限の努力をいたします。

しかし、体外受精・胚移植を含め現在の不妊治療は必ず妊娠するとは限らない先の見えない治療です。実際にタイミング法や人工授精などの一般不妊治療で妊娠できる人が約40%、体外受精・胚移植などの高度不妊治療で妊娠できる人が約30%といわれています。

これは体外受精・胚移植まで行っても妊娠できない人が約30%いるということです。以下に当院での治療をやめる目安をいくつかあげます。

  1. 体外受精・胚移植反復不成功

    体外受精・胚移植で妊娠した患者さんの体外受精施行回数を調べると5回目までに妊娠しているケースがほとんどで6回目以降の体外受精で妊娠したケースは極めて少ないというのが実情です。

  2. 卵巣予備能低下

    卵巣内の卵子数は有限で、年齢では46歳以上、または卵巣予備能の指標である血中基礎FSH値が25以上、AMH0.1未満などの場合、卵子がほとんど残っていないと考えられます。

    ゴナドトロピン大量投与をしても卵胞が発育しない可能性が高く、妊娠成立はかなり困難になります。

  3. 着床不全、子宮内膜厚菲薄

    体外受精・胚移植での妊娠例は採卵時の子宮内膜の厚さが6mm以上で3層構造の場合が多いといわれています。

    いろいろな治療を行ったが子宮内膜が厚くならない、または排卵誘発使用周期、凍結胚移植併用の自然周期、人工周期でも子宮内膜が6mm以下で3層構造にならない場合などは妊娠成立がかなり難しくなります。

  4. その他、原因不明で毎回胚の質が不良の場合など

    セカンドオピニオンを求めて他院を受診される場合や他院で治療をお考えの場合は遠慮せずに担当医に相談してください。

    患者さんの当院での治療につきましては要請があればいつでも貸し出しおよび紹介状の作成をさせていただきます。

学会への報告義務について

赤ちゃんへの影響などまだ解っていないこともありますが、そのためにも我々は体外受精・胚移植の結果および妊娠成立後の妊娠経過を日本産科婦人科学会に報告する義務があります。したがって妊娠成立後に他院へ転院した場合、分娩終了後に妊娠経過を当院へ連絡していただきます。

なお、学会に報告する内容に患者さんの氏名など個人情報を特定できるようなものは含まれておりません。また、これとは別に当院では治療成績を関連する学会などや論文誌上に発表することがありますが、同様に患者さんの個人情報保護に充分留意して行います。

以上、当院の体外受精・胚移植の概略をご説明しました。何かご不明な点やご質問があれば、遠慮なく担当医または看護師にお申し出ください。

お問い合わせ先
恵愛生殖医療医院
電話:048-485-1185(代表)

体外受精に関するよくある質問

体外受精に関するよくある質問は以下の通りです。

また、当院に関するよくある質問はこちらをご覧ください。

治療開始・相談について

体外受精(ART)を始めるか悩んでいるので相談したい

受付にて、当院の体外受精(ART)について詳しく解説したパンフレットをご用意しております。治療を検討されている方は、まずそちらをお読みください。

パンフレットを読んでもご不明な点がある場合や、直接医師に相談したい場合は、Web予約の「その他・相談希望」枠にてご予約ください。なお、料金に関するご質問は受付スタッフへお気軽にお尋ねください。

カウンセリングを希望する場合は、どうすればよいですか?

体外受精・胚移植について、お気持ちやご不安を整理したい場合には、カウンセリングを受けていただくことも可能です。

ご希望の方は、担当医または看護師にお申し出ください。日程や実施方法についてご案内いたします。

説明を受けた内容について、あとから質問しても大丈夫ですか?

はい、いつでもご質問いただけます。

ご説明時に理解しづらかった点や、あとから疑問に思ったことがあれば、遠慮なく担当医にお尋ねください。

同意書にサインをいただいた後でも、質問やご相談はいつでも可能です。

通院スケジュール・流れについて

体外受精(採卵周期・胚移植周期)開始希望ですが、月経1~3日目の来院が難しいです。

月経4日目以降でも周期を開始できる場合がございますので、諦めずにまずは一度ご受診ください。

※採血・内診による検査の結果、その周期での開始が見送りとなる可能性もございます。あらかじめご了承ください。

採卵周期中の通院回数は何回ですか?

患者様それぞれのホルモン値や卵胞の育ち具合によって決定するため、一概に通院回数をお伝えすることは難しいのが現状です。

目安として、採卵日が決まるまでは「1週間に少なくとも1回以上」のご来院が必要となります。
※排卵のタイミングや、卵巣刺激過剰症候群(OHSS)などの副作用の兆候を見逃さないためにも、必ず医師の指示通りにご来院をお願いいたします。

移植周期中の通院回数は何回ですか?

「ホルモン補充周期」の場合には、月経1~3日目の開始時と、胚移植の約1週間前の計2回の来院を経て、移植日当日を迎えます。

「自然排卵周期」の場合には、排卵のタイミングを合わせるため数回の来院が必要となる場合があります。

治療中のリスク・体調変化について

OHSSとは何ですか?

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とは、主に排卵誘発剤(注射薬など)を使用した際に、卵巣が大きく腫れ上がり、お腹や胸に水がたまるなどの症状が出る状態のことです。

多くの卵子を育てる「高刺激法」や、採卵前の切り替え注射に「オビドレル(HCG)」を使用した方に起こりやすい傾向があります。重症化が予想される場合には、予防薬を処方することがあります。

【主な症状と経過】
腹痛は比較的軽度なことが多いですが、悪化するとお腹の張り・苦しさ、吐き気などが現れ、尿が出にくくなることがあります。
症状のピークは採卵の4~5日後で、7日目以降には軽快することがほとんどです。

自力で歩行できる程度の症状であれば、ご自宅で安静にして様子を見ていただいて構いません。その際は、水分を多め(1日500ml以上)に摂るようにしてください。

OHSSの症状が治まらない場合はどうしたら良いですか?

「自力で歩行できないほどの痛み」「尿が出にくい」など症状が強い場合は、すぐにお電話でご連絡いただくかご来院ください。

特に採卵後1~2日目で強い症状がある場合、その後さらに悪化する可能性があります。可能な限り早く当院を受診し、医師の診察を受けてください。状況によっては連携先の病院での入院管理が必要となることがあります。

【受診時のお願い】
  • 体調悪化に備え、できる限りご家族の方とご来院ください。
  • 最後に食事・水分を摂った時間と内容を控えておいてください。
  • ご自身での運転は避け、帰宅手段を確保してご来院ください。
  • 市販の痛み止めは服用していただいて構いません。

採卵後から数日経っても腹痛がある場合は?

軽度の腹痛であれば、そのまま様子を見ていただいて構いません。

もし発熱を伴ったり、腹痛が強い場合には、すぐにお電話でご連絡いただくかご来院ください。ご来院の際は、ご自身で運転せず、できる限りご家族の付き添いをお願いいたします(市販の痛み止めは服用可能です)。

体外受精・胚移植の治療中に、緊急のトラブルがあった場合はどうなりますか?

治療中に予期せぬ事態が発生した場合には、担当医がその時点で最善と考えられる対応を行います。処置の内容については、患者様の安全を最優先に、担当医の医学的判断に基づいて実施されます。

処置後、ご不明な点があれば改めて丁寧にご説明いたしますのでお申し出ください。

治療後の経過・結果・生活について

受精確認のメールが届かないのですが。

採卵翌日の18:00前であれば、まだ送信されていない可能性がありますので、もうしばらくお待ちください。

また、以下の点をご確認ください。

  • アットリンクアプリの通知設定で「メール通知」がオンになっているか。
  • キャリアメールの迷惑メール拒否設定になっていないか。
  • iCloudメールをご利用の場合、システム上メールが届かないケースがございます。可能であれば他のメールアドレスをご登録ください。
採卵後にすぐ月経が始まりました。胚凍結結果の受診予定を待たずに早めに受診した方が良いですか?

採卵後は、ホルモンの急激な減少により、早ければ2-3日後から月経が始まることがありますが、お体にとって特に問題はありません。予定通り次の胚移植周期へ進んでいただけます。

また、胚の凍結結果が出るまでにはお時間がかかります(採卵の1週間後以降)。そのため、月経が来てもすぐには受診せず、予定通り採卵の1週間後以降にご受診ください。

胚移植後の生活について教えてもらえますか?

特に安静にする必要はありませんので、普段通りの生活を送っていただいて大丈夫です。ただし、激しい運動はお控えください。

胚移植当日は入浴を避け、シャワー浴のみでお過ごしください。
また、夫婦生活については、判定日までは控えていただくようお願いいたします。

胚移植の当日/翌日に少量出血があり大丈夫か?

移植時の器具(カテーテル)の刺激や、腟内消毒により数日間出血が続くことがあります。少量でしたら心配ありませんので、そのまま様子を見てください。

出血がある際に入浴すると細菌感染のリスクがありますので、出血が止まるまではシャワー浴のみでお過ごしください。

同意書・事務手続きについて

同意書にサインしたあとでも同意を撤回できますか?

はい、同意書を提出されたあとでも、同意を撤回していただくことは可能です。その場合は、まず担当医とよくご相談ください。

同意をされなかった場合や、あとから同意を撤回された場合でも、今後の当院での診療や治療において不利益を受けることは一切ありませんので、ご安心ください。

体外受精・胚移植に同意できない場合でも、治療は続けられますか?

同意できない場合でも、すぐに治療が終わってしまうわけではありません。担当医ともう一度よくご相談いただき、今後の治療方針や他の治療法について一緒に検討します。

ご不安やご希望があれば、遠慮なくお伝えください。

凍結胚の更新(廃棄)の手続きに行きたいのですが、遠方で来院できません。

凍結胚の更新(廃棄)の手続きは、郵送でのやり取りも可能です。

お手続き方法をご案内いたしますので、一度お電話にて当院へご連絡ください。